──選抜では一番の注目を集めるエースの奥川投手の成長具合は、いかがですか?
林監督「ここまで順調に経験を積みながら、いい成長をしてきたと思います。1年生の時は頼りない面もあり、投げさせていませんでした。その秋の決勝戦で、日本航空石川高校にメッタ打ちにされ、その悔しい経験が冬の練習に取り組む姿勢に表れたと思います。2年春、4安打完封でその日本航空石川に雪辱を晴らし、一つステップを踏みました。さらに、昨夏のU18の代表合宿で明治大学を相手に投げてみて、『上のレベルではまだまだ通用しない』と感じたと言っていました。
甲子園やU18の投球ビデオを見て、荒山コーチと共に1か月半で投球フォームを改良していきました。アドバイスにも聞く耳を持ち、素直に吸収して良くなっていくのが奥川だと思います。その後に、彼の集大成として神宮大会の初戦の広陵高校戦での結果に繋がったと思います」
──林監督から見て、奥川投手の強みはどこでしょう。
林監督「バッターと勝負が出来る点です。150キロのストレートが速いのはもちろん凄いことですが、1年生で入ってきた時からバッターと駆け引きが出来ていました。普通の高校生なら、どの球でストライクを入れよう、どうやってかわす投球をしようなどを考えるところが、奥川は打者によって、力を抜いたり、ギアを入れたりできるクレバーな投手です。その能力は群を抜いてうまい投手ですし、バッターの顔色を見ながら、勝負できる能力には、驚きました」
──力感のないリラックスしたフォームから、腕の振りがとにかく速いという印象です。
林監督「コーチの意向で、投球フォームについては口酸っぱく言っています。無駄な力を入れないことが大事なことだと思います。力感なく、良い回転で放ることが球速以上に大事なことで、この冬は球種を増やすなどせずに、今持っている球種を磨いてきました」
──他に、今回の選抜で結果を残してもらいたい選手といえば誰でしょう。
林監督「1番を打つ東海林航介です。奥川一人では、失点を少なくするにも限界があるので、1番打つ確率が高い東海林の活躍は不可欠です」
昨夏の甲子園は100回記念大会ということもあり、異様な盛り上がりの中、開催された。開幕カードは松井秀喜氏が始球式を行うことが決まっていた。抽選会でその開幕戦を引き当てたのは星稜だった。当時2年生エースだった奥川は、「石川県民にとって、松井さんは伝説の人です」と、間近でその始球式を見ていた。
1塁側ベンチ前で整列していた林監督にとって、松井氏は1学年上の先輩でもあり、尊敬すべき偉大な野球人だ。事ある毎に連絡を受け、「選手よりも、林の方が心配だよ」と激励を受けている仲でもある。
──このオフの期間は、どこに重点を置いて練習していましたか?
林監督「体を大きくすることが一つで、あとは秋に感じた課題のバッティングです。私が就任してから8年、打ち勝つ野球を理想とし、どんなピッチャーからでも5点以上取ることを目標としています。特に今年の冬はバッティングに重点を置いて強化しました。冬場は、室内練習場という限られた中で、ティーバッティングが練習の基本となります。そこで、様々な種類のティーバッティングを取り入れながら取り組んできました」
──星稜の名物練習といえば何でしょう。
林監督「山下名誉監督の時代から夏の予選前の6月の間に練習時間のほぼすべてを使ってやるノックです。いまも1塁と3塁に私と部長が分かれて、取れるか取れないかのところにずっとノックを打ち続けます」
──現在建設中の新しい寮が完成したら、また追い風になりますね。
林監督「1学年25人ぐらいが、冬場に室内練習場を回すことが出来る最適な人数だと思うので、増やす考えはありません。現在、県外の生徒は3割いかない程度で、基本的には地元の生徒が多いです」