• TOP
  • コラム
  • 高齢者問題を考えるきっかけに!おすすめの本3選【ヘルパーライターの読書メモ2】

コラム

2019.03.26 06:00  介護 ポストセブン

高齢者問題を考えるきっかけに!おすすめの本3選【ヘルパーライターの読書メモ2】

ヘルパーライター末並俊司氏おすすめの本


 両親の介護をきっかけに、日本の抱える高齢者問題、介護の行く末に強く思いを寄せるようになったという週刊誌記者の末並俊司氏は、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を取得し、ボランティアでホスピスケア施設での仕事も行っている、自称「ヘルパーライター」。

 その末並氏が読んできた介護関連書籍から、おすすめの3冊を紹介してもらう。

 * * *

◆日記?小説?どちらにしろ老人問題を鋭くえぐる快作『83 1/4歳の素晴らしき日々』

 本作の著者は世界に冠たる福祉国家オランダに住む83歳のヘンドリック・フルーン氏。老人ホームに暮らす彼の2013月1日から1年間にわたる日記がベースだ。当初はオランダの文芸ウェブサイトに連載されていたが、後に書籍化された。

 人口約1700万人のオランダで32万部というから超のつくベストセラーだ。これまで36カ国で翻訳され本国ではテレビドラマにもなった。

 そもそもヘンドリック・フルーン氏は実在するのか、手練の小説家による覆面作品か。本国でも議論となったが、どうやら匿名作家のペンネームらしい。

 本作が本物の日記なのか、日記の体を借りた小説なのか。気にはなるが、深掘りしても意味はない。余計な詮索はせず中身を楽しむのが正しい姿勢だ。

 ヘンドリックは気の合う仲間たちと「オマニドクラブ」を組織する。オマニドとはオランダ語の「年寄りだがまだ死んでいない」の頭文字を取った造語だ。

 老人ホームのなかで起こる“いじめ”や“事故死”を横目に見ながら、オマニドクラブはエクスカーション(文化的な視察)と称し、定期的な外出レクリエーションを楽しむ。頼りになるのはフルチューンナップした電動カートにわずかばかりの貯金と年金だけ。

 高福祉国家のオランダでさえ、我が国と同じく老人たちは長生きリスクに怯えて暮らしている。高齢化の生み出す問題は、先進諸国の抱えた共通の悩みであるようだ。

 しかし、フレデリックは「年老いていることが流行っている(P375)」と自身が置かれた状況を皮肉る。

 フレデリックに習って高齢者はトレンディでナウい存在だ──と考えれば、歳を重ねることに少しだけ勇気が湧いてくる、かな。

【データ】

書名:『83 1/4歳の素晴らしき日々』(集英社)
著者:ヘンドリック・フルーン 、翻訳: 長山 さき
定価:2160円

◆日本とドイツを往復する著者による介護文化の比較『老後の誤算 日本とドイツ』

 2013年1月、本作の著者・川口マーン惠美氏の88歳の父親が下痢や嘔吐の症状で救急病院に運ばれる。6日後に退院するが、入院中に下肢の筋力が著しく低下。立ち上がることができなくなった。

 追い打ちをかけるように母親がテーブルから落ちて頭と背中にケガ、それやこれやで81歳の母親と88歳の父親、ふたりきりでの生活は不可能となった。大急ぎで帰国した川口氏は駆けずり回って両親の入居先を探す。

「そのうち来ると思っていた介護の問題が、いよいよやってきた」

 当時の川口氏の心境だ。

 日本の大学を卒業後、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学院を修了した川口氏は、ドイツで結婚し、日本とかの国を往復しながら作家活動を続けてきた。ドイツは日本と同じように、介護保険のある国だ。そもそも日本はドイツのそれを参考にして介護保険の制度を整えた。しかし、両国には違いも多い。

 日本には公の施設である特別養護老人ホームがあり、比較的安価で介護サービスを受けることができるが、あちらにはそうした施設はない。また介護サービスを利用するさいに司令塔となるケアマネジャーのような仕組みもドイツにはない。その分、在宅介護を後押しする仕組みは日本よりも充実していたりもする。

 高齢化にともなう問題をドイツに住む日本人という目線で比較した本書を開くことで、介護サービスの未来が見えてくるようで面白い。

【データ】

書名:『老後の誤算 日本とドイツ』(草思社)
著者:川口マーン 惠美
定価:1512円

◆介護の基礎からからマニアックなネタまで満載『老人ホーム リアルな暮らし』

 著者の小嶋勝利氏は老人ホーム紹介業者の国内最大手「みんかい」の運営に携わる人だ。以前は様々なタイプの老人ホームで介護職員や相談員、施設管理者として勤務していた。

 本書は有料老人ホームの現状を知るテキストとしては一級だ。

 例えば、高齢者施設の運営を語るときに必ず出てくるのがスタッフの定着率の悪さだ。国は職員の処遇を改善した場合に施設側に加算する仕組みを作るなどして定着率を上げようとやっきだが、現実はなかなか改善されない。

「根本的な理由は◯◯にある」と学者や評論家のような人たちがいろんなところで難しい論をぶっているが、正直どれも腑に落ちたことはなかった。

 ところが本書では現場から叩き上げた目線で『介護職員が辞める理由は、割に合わないから』とすっぱり言い切り、理由を明確に示す。

 第2章では老人ホームでの1日をスタッフの目線から綴っており、これがすこぶる面白い。

 朝食の時間はなぜ9時なのか、どうして10時にお茶の時間が用意されているのか。申し送りで使われる専門用語まで。え、そこまで書くの、と突っ込みたくなるようなリアルな現実が展開される。

 第4章の、老人ホームを舞台に起こった様々なエピソード集も読み応え十分だ。

 老人ホームってどんなとこ? 知りたいけどちょっと怖い。

 上のように感じているあなた、本書を手に取ることをおすすめする。

【データ】

書名:『老人ホーム リアルな暮らし 』(祥伝社新書) 
著者:小嶋勝利 
定価:886円

関連記事:認知症をテーマにした読んでおきたい一冊【ヘルパーライターの読書メモ】

◆末並俊司

『週刊ポスト』を中心に活動するライター。2015年に母、16年に父が要介護状態となり、姉夫婦と協力して両親を自宅にて介護。また平行して16年後半に介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を修了。その後17年に母、18年に父を自宅にて看取る。現在は東京都台東区にあるホスピスケア施設にて週に1回のボランティア活動を行っている。 

→シリーズ「介護の知らない世界」を読む

関連記事

トピックス