もちろん、彼がお金の価値を否定しているわけではない。「お金以外の価値基準ももっていないと、人生は楽しめない」ということだろう。冒頭のアンケートでは、「仕事をリタイアする年齢までに、どれくらいの貯蓄があれば安心だと思えるか」を聞いたところ、平均で20代は4026万円、30代は4955万円、40代は5473万円という結果が出た。注目すべきは、1000万円以下と回答した人が全体で34.3%(「0万円が5.7%、1万~500万円が10.5%、501万~1000万円が18.1%」)もいたことだ。
1000万円は大金には違いないが、メディアで「老後資金として3000万円は必要」などと煽っていることを考えれば、ちょっと少ないのではと思える。3人に1人は「お金はそんなにいらないよ」と言っているのではないか。
もしかすると、こしら氏がいう「お金以外の価値基準」を多くの人が持ち始めているのかもしれない。本当に大切なものは、お金のように簡単に増えたり減ったり、誰かに奪われてしまうようなものではない、と。
◆取材・文/岸川貴文(フリーライター)