だが、デジタルプラットフォーマーの場合、それらのいずれも当てはまらない。それどころか、グーグルやフェイスブックは普通に利用する分にはタダであり、むしろ消費者の利便性や効率を高めている。また、そもそもデータは検索や買い物を通じて消費者自身が提供している。となると、GAFAなどが個人データを独占して莫大な利益を上げているのは企業努力の結果であり、それを規制するルールがあるかと言えば、従来の独占禁止法のどこを探しても見当たらないのだ。
ただし、タダで便利なように見えて、実のところデジタルプラットフォーマーは様々な情報を吸い上げて利用者を“丸裸”にしている。情報シェアを高めることによって販売効率を高めるというのは昔からマーケティングの人間が憧れていたことであり、それをデジタルプラットフォーマーはほぼ自動的にやっているわけで、これほど一握りの大企業が情報を独占するという状況は、誰も想定していなかった。
この巨大化したデジタルプラットフォーマーにタガをはめるため、世界中で個人データの取り扱い規制や新税導入などの動きが加速している。
すでにEU(欧州連合)欧州委員会は3月20日、グーグルに対し、インターネット広告の分野でEU競争法(独占禁止法)に違反したとして14億9000万ユーロ(約1900億円)の制裁金を科した。日本の公正取引委員会も、デジタルプラットフォーマーが不当に個人情報を集めた場合、これまで企業間の取引にしか適用してこなかった「優越的地位の濫用(※取引上優越した地位にある企業が、取引先に対して不当に不利益を与える行為。独占禁止法により、不公正な取引方法の一つとして禁止されている)」を個人との取引にも適用し、独占禁止法を適用する方針を固めたと報じられている(『朝日新聞』3月6日付)。
しかし、検索サービスやSNSサービスの対価として個人の情報を集めることは、デジタルプラットフォーマー以外の企業も、細々とではあってもみんなやっている。その線引きをどうするのか、中小企業は規制しなくてよいのか、という問題がある。