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2019.04.15 16:00  マネーポストWEB

年金受給の分かれ道、「夫の繰り上げ」で大損か「妻だけ繰り上げ」で得するか

妻だけ「繰り上げ」でこんなにお得

 年金の繰り上げ受給は早くもらえることと引き換えに、受給額が減額される仕組みだ(前倒し1か月ごとに0.5%減)。そこで大きな問題となるのが、「在職老齢年金」の仕組みである。

「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。

「60歳を過ぎても厚生年金に加入して働きながら年金を受け取る場合、65歳未満の人は『給料と年金の合計』が28万円を超えると、年金の一部がカットされてしまいます(65歳以上は47万円超)。働けば働くほど、年金の減額幅が大きくなっていくのです」

 この「在職老齢年金」の制度があることが、本来65歳からの年金受給を前倒しする「繰り上げ受給」を選ぶ上でもネックとなる。

 都内在住63歳の専業主婦Dさんは、本来ならば65歳から始まる基礎年金の受給を60歳に繰り上げた。

「65歳からもらっていたら月額約6万2500円のはずだった年金が、月額約4万4000円まで減額されましたけど、これでよかったと思いますよ。将来的に年金制度は崩壊しないまでも、額が減らされることは確実でしょう? それなら、早くもらっておいたほうがいい。

 繰り上げするって決めたのは、女友達のアドバイスがあったから。その友達のご主人は60歳過ぎても働いていて、“旦那の年金を前倒しするとカットされちゃうけど、私の年金なら早くからもらっても大丈夫だから”っていっていました」

 こうした「妻だけ繰り上げ受給」が、今後は「賢い選択」として広がっていく可能性が高い。背景には逼迫する60代以降の生活がある。

 日銀の金融広報中央委員会が行なった「家計の金融行動に関する世論調査(平成29年)」によると、老後の最低予想生活費は月27万円となっている。一方で、別の調査では、継続雇用者の4割が「定年直前の半分以下まで年収が減った」と回答している(明治安田生活福祉研究所、「50代・60代の働き方に関する意識と実態」、2018年)。

 フルタイムの現役時代から収入が半減するとなれば、再雇用の給料だけで生活費を捻出するのは困難だ。

 そうしたなかで選択肢として浮上してくるのが、年金の「繰り上げ受給」である。前述の通り、通常は65歳受給開始の年金を、減額と引き換えに前倒しで受け取る制度で、最大限60歳まで繰り上げると、毎月の受給額は30%減額となる。

「注意したいのは、働いている夫が繰り上げ受給を選択すると、在職老齢年金によるカットにも引っかかり、“二重の減額”になってしまう恐れがあることです。

 そこで、考えたいのが『妻の年金の繰り上げ』です。専業主婦の妻が基礎年金の受給開始を前倒しするぶんには、夫にどれだけ給与所得があっても、年金がカットされることはありません。厚労省の標準モデル(夫婦で年金22万1504円)で考えれば、妻が60歳まで繰り上げた場合の受給額は月額約4万5000円になります」(前出・北村氏)

 たとえば、夫が月給25万円の再雇用で働いていて、老後の生活費の目安となる「月27万円」に少し届かないケースを考えてみる。

「妻の繰り上げ」で月4万5000円収入が増えれば、家計の赤字を埋めることが可能になる。一方、同じケースで、「夫の繰り上げ」を選んでしまうと、赤字を埋めるために失う年金額が一気に大きくなる。

 厚労省の標準モデルを基準にして考えると、夫が65歳から受け取れる年金は月額約15万6000円。それを60歳から繰り上げ受給すると、10万9000円まで減額されてしまう上に、毎月の給料が25万円あると在職老齢年金で「月額約4万円」の年金カットとなる。65歳から受給した場合に比べて、年金は月額9万円も削られてしまう。

 対して、「妻の繰り上げ」なら在職老齢年金によるカットは「ゼロ」で、本来受給額から月額2万円の減額で済む。前出・北村氏が続ける。

「繰り上げ受給を選ぶ場合、基礎年金と厚生年金をセットで繰り上げることしかできません。“夫の基礎年金だけを繰り上げる”といった選択ができないため、サラリーマンで定年まで勤め上げた夫の年金をまるまる60歳まで繰り上げてしまうと、再雇用で働いている人でも、28万円の支給停止ラインに引っかかってくることが多い。そういった観点からも『妻の繰り上げ』は、使い勝手がいいのです」

 妻の繰り上げ受給で家計が助けられるのは、専業主婦のケースに限らない。

「夫の定年後、苦しくなった家計を助けるために妻が働きに出た場合でも、繰り上げによる年金収入が月4万円程度であれば、よほど長時間働かない限りは妻の年金が支給停止の対象になる合計28万円のラインを超えるとは考えにくい。そもそも、短時間のパートなら『厚生年金に加入しない働き方』となるケースも少なくないでしょう」(同前)

 年金のもらい方を夫婦で考えることで、工夫できる幅は大きく広がる。

※週刊ポスト2019年4月19日号

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