「美智子様の髪の毛はほんの少しだけ癖がありましてね、それを油をつけてゆっくりと結い上げていきました」
美智子妃は何度も何度も、「ありがとうございます」という感謝の言葉を高谷ら内掌典に残したという。
美智子妃の存在によって、高谷ら内掌典と両陛下との距離は近いものになっていった。
「身の回りの世話をする女官ほど日常的に接する機会は少ないものの、美智子様が内掌典の部屋にいらっしゃることもありました。民間から来られて何かと苦労されていた美智子様が、傍目からも強くなられたのは浩宮殿下の母になってからのようでした」
そう高谷は述懐していた。宮中で美智子妃、浩宮らとともに『101匹ワンちゃん』を見た時の美智子妃の母としての喜びに溢れた姿は、高谷の目に焼き付いていた。
◆児玉博(ジャーナリスト):1959年生まれ。早稲田大学卒業後、フリーランスとして取材、執筆活動。著書に大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)の受賞作を単行本化した『堤清二 罪と業 最後の「告白」』(文藝春秋刊)、『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館刊)など。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号