溝口:ボクサー出身といえば、元世界チャンピオンの渡辺二郎は山口組系極心連合会の相談役になっていましたね。
鈴木:福岡にある大州会という組にはボクシングジムがあって、刺青の組員がサンドバッグ叩いている姿が絵になるって取材に行ったことがあります。週に1回、プロボクサーが教えに来ていると言ってました。
溝口:京都の山口組系淡海一家の事務所には、でかい空手道場があって組員にやらせていました。
鈴木:地方の荒っぽいとこなんかだと、ヤクザがカタギに喧嘩吹っかけられることも多くて、ヤクザが負けたら暴力団の威信に関わるからって、子分らを鍛えているっていう側面もある。
溝口:同じ格闘技でも、柔道、剣道はヤクザとの関係を聞かない。恐らく、警察の領分になっているからでしょう。
◆宴席に現役の大関が
鈴木:なるほど、そうかもしれませんね。レスリングは多少ありますよね。プロレスの場合は、日本プロレス協会の副会長が田岡一雄・山口組三代目だったり、興行がシノギになっていましたが、その延長としてアマチュアレスリングもヤクザとの関係を持ちやすい。
数年前に、日本レスリング協会の福田富昭・会長に、山口組最高幹部だった大石誉夫・初代大石組組長との交際が発覚し、それが昨年のレスリング協会のゴタゴタの中で蒸し返されました。
溝口:大石組長は金持ちで知られていて、17年に亡くなるまで銀座で豪遊している最後の生き残りだって言われていました。
●みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』、『山口組三国志 織田絆誠という男』など著書多数。
●すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など著書多数。近著に『サカナとヤクザ』、『昭和のヤバいヤクザ』。
※週刊ポスト2019年5月3・10日号