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2019.05.29 07:00  マネーポストWEB

極端な金持ちも貧困層も多い… 中国社会が辿る「アメリカと同じ道」

実は中国はアメリカとよく似ている?

 富裕層には様々な定義がある。例えば100万ドル以上を富裕層とすると、日本はアメリカ、中国に次ぎ世界第3位となるようだ。しかし、10億ドル以上の資産を持つビリオネアの数をみると日本は途端に後塵を拝する。

 米調査会社Wealth-Xが発表した最新のデータによれば、2018年における世界のビリオネアは2604人である。国別トップ10は以下の通り。アメリカ、中国、ドイツ、ロシア、イギリス、スイス、香港、インド、サウジアラビア、フランスとなっており、日本は圏外である。

 都市別トップ10は以下の通り。ニューヨーク、香港、サンフランシスコ、モスクワ、ロンドン、北京、シンガポール、ロスアンジェルス、ドバイ、ムンバイとなっており、ここでも日本の都市は圏外である。

 性別では男性が88.3%である。男性の中で、何の資産も持たずに一代で事業を成功させたビリオネアは61.6%を占める。事業を継承したが、その後それを大きくしビリオネアになったのは30.1%、資産を継承しただけのビリオネアは7.9%に過ぎない。

 平均年齢は66歳だが、中国だけに限れば56歳である。中国のビリオネアの内、50歳以下が22%を占めている。中国は、若くして巨額の資産を稼ぐチャンスの大きな国と言えるかもしれない。

 日本には超お金持ちは少ないようだが、貧困層はどうなのだろうか。2016年におけるOECD(経済協力開発機構)による貧困率をみると、中国は28.8%で、調査対象42か国中トップである。アメリカは17.8%で6位、日本は15.7%で13位。中国は一人当たりGDPが日本の4分の1程度なので、貧困率が高いことは十分予想できるが、アメリカが日本よりも高いのは驚きかもしれない。

 所得格差の大きさを示すジニ係数(OECD)をみると、2016年は、南アフリカが0.62で42か国中トップ。中国は0.51で2位である。アメリカは0.39で9位、日本は0.34で17位である。

◆対中強硬策が中国の産業発展を進める可能性も

 こうしてみると、中国やアメリカは、極端な金持ちが多いが、貧困者も多い。一方、日本は逆に極端な金持ちは少ないが、貧富の差も小さい。

 日本にはアントレプレナーが少なく、急成長を遂げるイノベーション企業の数も少ない。大企業では、社長と新入社員の給与格差は小さく、また、崩れつつあるとはいえ、年功序列、終身雇用の習慣が残っており、中国、アメリカなどの諸外国と比べれば、雇用は安定している。社会主義的な組織形態とも言えるだろう。

 一般に、個人主義的な自由主義を基本原理とするのが資本主義であるのに対して、平等で、公正な社会を目指すのが社会主義と言われる。しかし、社会主義国である中国では、アリババ、テンセント、バイドゥ、あるいは最近注目のファーウェイ(華為技術)をはじめ、多くのアントレプレナーがイノベーション企業を生み出しているのが現実だ。富裕層も多いが、貧困者も多く、所得の不平等も大きい。これはアメリカとよく似た社会形態である。

 アメリカの対中強硬派は中国の補助金政策を非難するが、アメリカも農業に対しては厚い補助金を支給している。中国に技術移転の強制をやめさせようとしているが、中国は国家による強制は止めるとしているが、民間については、彼らの自由な経営にまで口を挟めないとしている。アメリカは、中国企業に対してスパイ行為を疑っているが、そもそもアメリカ自体が組織としてCIA(Central Intelligence Agency)を持ち、諜報(Intelligence)を行っている……。

 見方によっては、米中はよく似た国家である。というよりも、中国がアメリカ流経済システムを学び、吸収した結果、よく似た国家になったのではないだろうか。ただ、大きく違う点がある。アメリカは産業発展段階の先を走っている点である。

 アメリカが貿易では赤字、金融収支では黒字となっているのは、脱工業化、経済のサービス化が進展した結果であり、アメリカが、国全体として、より楽に、多額の富を得るシステムを作り上げたことによる。

 トランプ大統領が貿易黒字を減らすよう中国に迫ることは、アメリカが辿ってきた産業発展の階段を早く登れと言っているのに等しい。

 この先、中国が一帯一路戦略に沿って周辺国のインフラ整備に協力するとともに、周辺国に投資する形で製造業を移し、脱工業化を進める。さらに、金融、ハイテク情報産業を全力で発展させて、経済のサービス化を進展させる。そうすれば、中国の貿易収支は赤字基調となり、サービス収支、金融収支は黒字基調となるだろう。米中の貿易関係は希薄になることで均衡に近づくことも予想される。

 しかし、その時は、米中が金融、ハイテク情報産業で互角となる可能性がある。アメリカとしては、中国経済が付加価値の低い輸出産業に重点のある経済構造のままの方が、都合が良いはずだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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