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コラム

2019.05.31 06:00  介護 ポストセブン

同じ話を繰り返す認知症の人に、時には「否定する」対応もありな理由

同じ話を繰り返すのは、認知症の症状のひとつだ

 認知症の人が、同じ話を何度も繰り返すので、介護する人がうんざりして対処に困るという悩みはよく聞く。ついイライラして怒ってしまったり…。正しい対応をしないといけないと言われているので、自己嫌悪に陥ることもあるかもしれない。

 認知症の母を遠距離で介護している作家でブロガーの工藤広伸さんも、実体験からこういった悩みを抱えたときの対処法を提案しているが、今回は、また違った視点でのアドバイスをしていただく。介護で頑張っている人、是非ご一読を!

【目次】

 * * *

◆同じ話を繰り返す認知症の人への正しい対処法

 同じ話を何度も繰り返す認知症の人に対して、介護する側が「それ、さっきも聞いたよ!」とか「同じこと、何回言うの!」と言ってしまい、言い争いになることがあります。

 認知症の人は、自分が同じ話を繰り返していると思っていないので、介護する側の認識と食い違うのですが、こういった場合、介護者は次のように対処するといいようです。

・同じ話であっても、初めて聞いたかのように対応する
・別の話を持ち出して、話題を変えるように心がける
・何度でも、丁寧に話を聞く
・一旦、その場から離れ、しばらく経ってから会話する

 自分に合わない対処法も含まれているので、別な方法を調べたり、考えたりして下記も実践しています。
 
・同じ話を5回以上繰り返したら、指摘してみる
・ホワイトボードや紙に内容を書き記し、認知症の人に見せる 

→関連記事: 何回まで我慢できる? 認知症「同じ話を何度もする人」への対処法

 これら対処法のおかげで、母は同じ話を止めてくれることもあります。しかし、根本的な解決には至らず、次の日にはまた、同じ話を繰り返すようになってしまいます。

 どの対処法もうまくいかないとき、わたしは介護者が認知症の人に対してやってはいけないと言われている「事実や正論」を、母にぶつけることもあります。

 なぜ、認知症の人に事実や正論をぶつけてはいけないのでしょうか?

◆間違った内容を繰り返し言う母にイライラする

 母は、同じ話を繰り返すうえに、内容が事実と異なっています。

 例えば、デイサービスの送迎をしてくださる職員は女性だと思っているので、男性職員がお迎えに来てくれたとしても、「今日も女の人が、家まで来てくれたわね」と必ず言います。

 その間違った話を1回、2回、10回と繰り返す母に対して、わたしは心の中で「いや、今日も男性が来たけどな…」とつぶやいていますが、声には出しません。

 母の間違いを指摘しない理由は、たとえ事実と違っていても、母の頭の中では「女性職員が送迎してくれた」ことが事実になっていて、それを変えるのは難しいからです。それでも、母の間違いを黙って受け入れ続けていると、今度はわたしのストレスが溜まっていきます。

 母の話は1日で終わるものではなく、週2回のデイサービスのたびに繰り返されるため、わたしのイライラはピークに。同じ話の繰り返しに加え、内容が間違っていることも、イライラに拍車をかける原因になっています。

「家に来たのは男性だよ」と、母に事実を伝えたい!

◆事実や正論を伝えるのは、介護者自身のガス抜きのため

 母に事実を伝える意味は、正直ありません。むしろ母にとっては、「自分の言ったことを息子に否定された」という思いや、「何を言っても息子は信じてくれない」という、わたしへのネガティブなイメージを植え付けることになるかもしれません。

 息子に否定されたという事実は忘れても、息子に対して嫌な気持ちを持ったことは覚えているとも言われているので、認知症の人に事実や正論を伝えるメリットは、ほとんどありません。

 それでもあえて、母に事実や正論をぶつける理由は、わたし自身のガス抜きのためです。ストレスが溜まって母と大ゲンカになる前に、ガス抜きをすることで、今のところ大きなケンカは回避できています。(その代わり、小さなケンカはたまにする)

 もうひとつの目的は、事実や正論を伝えたら、母は理解してくれるかもしれないという期待です。あまりに期待してしまうと、事実を理解できなかったときに、わたしがショックを受けてしまうので、淡い期待で留めています。

 母はたまに「今日は珍しく、男の人が来たわね」と言うこともあるので、わたしが伝えた事実や正論を、全く受け止められないというワケではないのだなと。

 しかし、次のデイサービスの日には「女性職員が迎えにきた」という話になりますし、誰が迎えに来たのかという質問を、母は何度も繰り返します。

 冒頭でご紹介した対処法を実践しながらも、時に正論をぶつけて、自分のストレスが爆発しないよう、感情をうまくコントロールしています。

◆100点満点の介護を目指す必要はない!

 たまにしか様子を見に来ない親族には、こうした日々のストレスはなかなか理解してもらえません。それどころか「もうちょっと優しく、話を聞いてあげたら」と言われ、親族ともケンカしてしまうこともあります。

 残念ながら、こうした日常のやりとりまで理解できる第三者はいませんし、介護経験者ですら、共感はできても100%状況を理解するのは難しいと思います。それゆえ、相談できる相手がいなくなり、ひとりで悩みを抱えてしまいがちです。

 そうなる前に、介護者自身でガス抜きができるポイントを探してみるといいと思います。世間一般で正しいと言われている対処法が、うまくいくとは限りません。100点満点狙いの介護で疲れないよう、注意してください!

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)

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