最近テストドライブして印象に残ったノンプレミアムモデルでは、まずプジョーの新世代Dセグメントセダン「508」がそうだった。プジョーはノンプレミアムだが、乗り心地や静粛性、高速道路での落ち着いた揺れなどはプレミアムセグメントと変わらない。
日本車で特筆すべきレベルにあったのは、ホンダの電動車「クラリティPHEV」だ。見た目はアメリカ向けの安物大型セダンそのものなのだが、走らせてみると同社の「アコードハイブリッド」などとは比較にならない驚くべき高速サルーンだった。
こうして下のクラスのレベルが上がってくると、プレミアムセグメントは辛くなる。もちろん車体の振動の制御やシートなどにお金がかけられるぶん優位性はあるのだが、その差が小さくなれば価値を認めてもらいにくくなる。
いきおい、絶対性能の高さに走らざるを得なくなるのだが、それはBMWが身上としてきた、絶妙なバランスのチューニングとなかなか両立しにくい選択でもある。インテリアがBMWらしくない華美なものになったのも、同様の追い上げによるところが大きいであろう。
顧客が商品に対して何を強く要求するかというポイントはブランドによって異なる。プレミアムセグメントの中でもとりわけドライビングの喜びに焦点を当ててきたBMWにとっては、今のトレンドは他のブランドに比べて強い逆風となるのは致し方がない。
もちろん高級車作りのノウハウが失われたわけではないので、その変化に対応する力がないわけではないのだが、走る喜びを新しい形で提供するアイデアを持たないと、いずれ強力なライバルたちに挟撃され、埋没しているリスクもある。
今後、その道をBMWが見出すことができるかどうか、興味深いところである。それはまた、新しい時代においてプレミアムブランドが顧客を喜ばせる価値をそれぞれの思想のもとに提供できるかという試金石にもなろう。