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2019.06.12 07:00  マネーポストWEB

金価格が上昇、米利下げ転換の可能性や中央銀行の準備拡大も影響か

金価格の上昇の背景に何があるのか(Getty Images)

 金(Gold)価格が上昇している。金先物(COMEX)価格の推移をみると、6月7日の高値は1352.70ドル/オンスで、2018年4月19日以来の高値を付けた。2014年以降、1400ドル/オンスの大台が上値抵抗となり、そこで跳ね返される展開が続いているが、持ち合い期間が長くなっており、テクニカルにはそろそろ上に抜けるのではないかといった期待も高まっている。

 金価格上昇の最大の要因は、アメリカの金利低下見通しが強まったことだ。米中貿易戦争の激化は輸出業者、輸入業者双方の利益を圧迫する。グローバル企業が大きなダメージを受ける。また、淘汰された製造業を国内に回帰させることは、経済の質を低下させる。

 足元のマクロ統計は景気の減速傾向を示す指標が出始め、債券市場では、逆イールドが発生、それが株価の下押し圧力となっている。株式市場の動向に強い関心を持つトランプ大統領はFRB(連邦準備制度理事会)に対して、ツイッターを通じて公然と口先介入しており、FRBのパウエル議長は今後、利下げの可能性を示唆し始めている。

 金の最大の弱点は、保有するだけでは利子や配当などを得られない点である。金利低下は相対的に金の弱点を小さくし、それが価格上昇の要因となる。

 また、ドル金利の低下はドルの需要を小さくすることからドル安要因となり、ドル安はドルで評価される金価格を逆に上昇させる要因となる。

 金価格上昇の要因としてもう一つ考えられるのは、各国中央銀行が金準備を増やし、金の実需が増加している点である。

 世界最大の外貨準備高を持つ中国は、金準備について、2016年10月末から2018年11月末までの2年1か月の間、1679トンでまったく変化がなかったが、12月末から一転して、金準備を増やし始めている。5月末は4月末と比べ14トン増やし、1747トンとしている。

 ワールド・ゴールド・カウンシルが発表したデータによると、2019年第1四半期に世界の中央銀行が購入した金は145.5トンで、前年同期比68%増となった。中国のデータも平仄を合わせて示しておくと、この期間、30トンを購入している。ちなみに前年同期はゼロである。金への需要は1053.3トンで、中央銀行の割合はそれほど大きいわけではない。しかし、全体が7%増に留まっている中での大幅増である。

 各国当局は、債券、株式市場に対して弱気の見通しを持っているのか、地政学リスクを気にしているのか、それともトランプ大統領の国際秩序を崩壊させるような「アメリカ第一主義」にドル覇権の弱体化を予想しているのか。いずれにしても、世界の金融当局が金を買い込んでいるといった事実は見逃せないだろう。

 金への投資は金利や配当が付かないといったデメリットがあるので、平常時には投資対象としての需要は小さい。しかし、世界経済が不安定になるような時期、投資家が株式、債券、REIT(不動産投資信託)などの金融商品にリスクを感じるようなときには、逆に需要が大きくなる。非常時に備えたいと思う投資家は金への投資を一度、検討しても良いだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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