それでもマネするしかない。なぜなら、誰も教えてくれないからです。自分で学ぶしかない。ひばりさんに限らず、いろんな歌手の方の「いいな」と思うところを必死にマネして、自分の中にため込んでいく。
それを自分なりに咀嚼して、自分の口から歌声として発した時、それがオリジナルになるのです。
ひばりさんは背中で語っていました。「お幸、芸は自分で見て覚えるんだよ」
そんなひばりさんでしたが、一度だけ、私に直接アドバイスしてくれたことがあります。私がテレビのバラエティ番組で、三度笠、股旅姿で時代劇のコントを演じていた当時のこと。ある時、ひばりさんに偶然お目にかかり、こう言われたんです。
「お幸、こないだの番組、透明なマニキュアをしてたでしょう?」
驚きました。私自身、マニキュアをしていたか、定かではありませんでした。
VTRで確認してみると、ほんの一瞬、ツメが映っていて、それをひばりさんは見逃さず、指摘してくれたのです。
「たとえバラエティであっても、時代劇は時代劇。どんなことがあっても、マニキュアはしちゃいけないよ」
細かいところにも十分に気を配る。そうひばりさんは教えてくれました。ひばりさんは今でも私のお手本です。行き詰まったらひばりさんをマネしてみる。学ぶことはまだまだ、数え切れないほどあります。
※小林幸子著『ラスボスの伝言~小林幸子の「幸」を招く20のルール』より抜粋