◆“非常識な登山客”も多い
もっとも、山小屋側にも言い分はあるようだ。時にビギナーに厳しい物言い、態度をとるのは「山の掟を叩きこむため」と、富士山のある山小屋主人はいう。
「山小屋は荒天時の避難所的な側面もあるため、1人でも多くの登山者が泊まれるよう、先着順で雑魚寝になってしまうのは仕方がない。
最近は夕方になって“泊まれますか?”と来る人がいるが、山小屋には遅くとも午後3時までに入るのが常識。午後になると山の天気は急変しやすく、生死にかかわることもあるからです。
悠長に諭していたら、守れる命も守れなくなるから言葉もぶっきらぼうになる。混雑時にベンチの利用を宿泊者と飲食物購入者に限定しているのは、酒盛りなどを始める非常識な人が多いからです」
北アルプスの山小屋の主人もこう話す。
「初心者に多いのが、途中で体力が尽き、飛び込みで泊まりに来るパターン。満員でもなんとか泊めてやろうとすると、土間しかないことだってある」
近年は、富士山への日帰り「弾丸登山」にチャレンジするビギナーもいるが、そうした流行が、結果として山小屋の負担となっているケースもあるわけだ。登山ガイドで「ネイチャーガイド・リス」代表の野中径隆氏はこう警鐘を鳴らす。