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2019.07.12 12:47  太田出版ケトルニュース

F-35はブタ? “プロフェッショナル・ナード”丸屋九兵衛が戦闘機を語る

丸屋九兵衛が語った今回のテーマは「戦闘機」

黒人音楽専門ウェブサイト『bmr』の主にして特殊系音楽評論家、歴史コメンテイターなど様々な顔を持つ“プロフェッショナル・ナード”丸屋九兵衛が恒例のトークライブ『Q-B-CONTINUED』を開催した。

今回でなんと28回目を数える長寿イベント『Q-B-CONTINUED』のこの日のテーマは、日本政府のF-35の105機「爆買い」問題などで世間の注目が集まっている「戦闘機」。学生時代に傭兵パイロットを描いた新谷かおるの名作コミック『エリア88』を愛するオタク教師に洗脳されて以来、戦闘機マニアの道をひた走ってきた丸屋が、カラス研究で知られる鳥類学者であり、同じく戦闘機オタクの松原始(まつばら・はじめ)をゲストに迎え、濃厚な戦闘機トークを繰り広げた。

そもそも二人の出会いは、某ウェブ媒体が企画した丸屋によるネコ語り企画。その取材場所となった某博物館の案内人として登場したのが松原だったのだとか。二人の出会いは奇跡的な邂逅というべきものだったようで、またたくまに戦闘機をはじめとするオタクトークで意気投合し、今回の対談が執り行われることになった。

久々に“濃い”オタク話ができる盟友とめぐりあった丸屋。今回のトークショーへの意気込みは半端ではなく、いつもは黒く艶めくジェリーカール・ヘアーを戦闘機に使われる「ダズル迷彩」に染め上げて登場。のっけから松原と戦闘機と北欧神話を絡めた濃厚トークを展開し、会場を若干困惑させつつトークショーへと雪崩込んでいった。

◆ネコ、おばけ…米軍の軍用機の形式番号には様々な法則がある?

我々一般人は「F-15E」と戦闘機の正式名称を言われても、単なる記号の羅列にしか感じられない。しかしとりわけ米軍の軍用機には、比較的わかりやすい命名規則が用いられている。

たとえば攻撃機は“Attack(攻撃)”の“A”、爆撃機は“Bomber(爆撃機)”の“B”、偵察機は“Reconnaissance(偵察)”の“R”、そして戦闘機は“Fighter(ファイター)”の“F”の後に、任務ごとに割り振られる数字の設計番号がつけられ、同型で異なるバージョンの航空機が作られた場合はその後に “A”から始まる<シリーズ記号>がつけられる事が多い。ちなみに実験機は「X」、試作機は「Y」で始まったりすることを付記しておこう。形式番号には、その軍用機についての情報が少なからず詰め込まれているのだ。

また米軍の戦闘機には「トムキャット」や「ファントム」など、モデルごとに愛称がついていることはなんとなくご存知のはず。この愛称にもちょっとした法則がある。実はグラマン社は「F6F ヘルキャット」「F9F パンサー / クーガー」「XF10F ジャガー」「F-11 タイガー」「F-14 トムキャット」といった具合にネコ科生物の名前、さらにマクドネル・ダグラス社(※厳密には前身となるマクドネル・エアクラフト社)は「 FH-1 ファントム」「 F2H バンシー(※鳴き声で死を伝える女妖精)」「F3H デーモン」「XF-85 ゴブリン」「F-101 ブードゥー」など、怪奇系の愛称をつける法則があったという。

◆戦闘機の知識なんか何の役に立つ?戦闘機は人生そのもの

とはいえ、こうした戦闘機知識が盛っていることでどんなメリットがあるのか──そう考える方も多いだろう。ハッキリ言って雑学や文化に対して実用的な意味を求める事自体不毛だと思うのだが、丸屋はそんな不躾な疑問にもこう応える。

「私の場合は本業に役に立つ。たとえばマライア・キャリーの『I Still Believe』のMVに登場する戦闘機をみて『F-22ラプターだ』と気付いたのは、日本では私だけ。それと映画『インディペンデンス・デイ』でF-18ホーネットに乗っていた俳優・ラッパーのウィル・スミスは、『Just Crusin’』 という曲のMVではF-16ファイティング・ファルコンに乗っていました。ところが、このMVはコックピットに考証ミスがあるんです。F-16のコクピットはあんなに狭苦しくない!そんなことに気付くことができるのは私だけだと思いますよ!」

鳥類学者である松原にとって、戦闘機はもう少し本業と関わりが深い。松原が「とびのインメルマンターン(※半宙返り半ひねり)」「オオタカのシザース機動とプガチョフコブラ」など、鳥の動きを戦闘機のマニューバ(※航空機の機動、動き方)に例えつつ、「鳥は飛行機で、飛行機は鳥。戦闘機の知識は鳥の飛行制御の研究に役立つと言えなくもないですね」と語ると、会場は大いに納得した様子だった。

鳥と戦闘機の共通点について語る松原に対して、さらに丸屋は人間と戦闘機について語る。ここからが深い。いや深イイ。

「戦闘機の歴史を見ていると、世間が求めるものが常に変わっている事がわかるはずです。さっきまでオンリーワンだった条件も、あっというまに求められなくなる。たとえばついこの間まで重視されていた『ステルス性』ですが、最新の第六世代戦闘機では、むしろスピードの方が重視されるようになっています。そのあたりは人生と似てますよね。ですから周りの言うことなんて、必ずしも一生懸命聞かなくても良い」

◆日本が大量購入しようとしているF-35の良くないところ

話の合う友人とのトークとあって、いつも以上に興奮気味の丸屋だったが、締めはやや落ち着いたトーンに。安倍政権下で問題となっているF-35の大量購入問題を批判的に語るという展開になった。

丸屋はF-35をベトナム戦争に投入された戦闘機F-111Cになぞらえて語る。経済学のスペシャリストでもあったマクナマラ国防長官(※1961~1968年まで在任)は、軍事予算削減のために、それまでは空海軍が別々に開発していた戦闘機の共同開発を決定。その結果、生まれたのが「アードバーク(ツチブタ)」という鈍重な愛称を持つF-111である。しかし船頭多くして船山に登る。共用部品が増えたことで重量が増え、空母に積めなくなったために海軍での運用が中止される。実は日本が大量購入するF-35もまた、こうした共同開発により作られた戦闘機だ。

「F-35は空軍、海軍、海兵隊だけでなく、アメリカ以外の国の意見も聞いて作ったために、各所にメンツを立てながら作らなければいけなかった戦闘機なんです。そのせいで、はた迷惑で器用貧乏な機体が出来上がってしまった。なにしろエンジンが一台しかないくせにとにかく重い。言ってしまえば“ブタ”です。そして値段も高い!」(丸屋)

辛辣にF-35をディスる丸屋が自衛隊にオススメするのは、スウェーデン製の最新鋭戦闘機「SAAB 39 GRIPEN」。1機70億円前後と110億円とも言われるF-35の6割ほどであるにもかかわらず、飛行や電子戦等においてはF-35を上回るとも言われている超コスパ系戦闘機だ。ひとしきり「SAAB 39 GRIPEN」の素晴らしさを熱弁した丸屋は、ふと我に返ったようにこうつぶやいた。「航続距離こそ短めですが、日本は他国を侵略しないわけですから問題ないですよね」。丸屋は戦争の道具を愛しつつも、さりげなく侵略戦争には異を唱える事も忘れない。大人のミリタリーマニアたるもの、かくありたいものだ。

<イベント情報>
丸屋九兵衛トークライブ【Q-B-CONTINUED vol.28】トップガン2まで365日記念祭! 今こそ戦闘機を語るのだ! トムキャットからF-35まで、鳥類学者と音楽評論家がスーパークルーズ feat. 松原始
場所:2019/06/25 (火) 19:30~
会場:FinGATE KAYABA

https://www.news-postseven.com/wp-content/themes/nps2019_pc/images/太田出版ケトルニュース

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