どこの自治体も、「新幹線の駅ができたら、わが町は大都会の仲間入り!」と頑なに信じて開発計画を策定する。「駅から見えるのは牧場風景だけ」というコンセプトの新幹線駅は前代未聞だ。しかし、八雲町は田舎であることをネガティブに捉えはしない。新八雲駅の計画は、あくまでもポジティブな考えに基づいて策定された。
「基本計画では、あくまでも八雲町が持つ牧歌的な風景や田園と調和する景観を大事にすることを盛り込みました。イメージ図には、ワイン工場や農場レストランも描かれていますが、これは町が整備する施設ではありません。あくまで、民間企業が進出する可能性も踏まえたイメージ図です。それなので、ワイン工場や農場レストランは未完に終わるかもしれません」(同)
新八雲駅の駅予定地には、下水道が整備されていない。そのため、駅トイレは浄化槽を設置して対応する予定だという。
利用者が少ないながらも廃駅にならずに頑張っている駅は、鉄道ファンから秘境駅と呼ばれる。昨今、秘境駅を巡るテレビ番組が人気を博し、雑誌で特集が組まれるほど認知度は高まっている。その結果、駅そのものが観光資源として再発見され、秘境駅をめぐるツアー旅行が販売されている。
市街地からはずれた牧場のど真ん中に、ポツンと新幹線の駅ができる。人気テレビ番組「ポツンと一軒家」ならぬ「ポツンと新幹線駅」の新八雲駅は、新幹線版の秘境駅のような存在として駅そのものが注目されて、人気を集めるかもしれない。