──読後、「文楽の舞台を生で見てみたい!」という気持ちが沸々と湧いてきました。文楽好きにとってはさらに深く楽しむための手がかりに、文楽のことをまだよく知らない人にとっては絶好の入り口になるはずです。
大島:もしもこの作品を読んで文楽に興味を持ってくださったなら、ぜひ五月に東京の国立劇場で通し上演される『妹背山婦女庭訓』に足をお運びください。『妹背山婦女庭訓』を通しで観る機会って実はなかなかない。三年前に大阪でも上演されていますが、そのときは今回と順番が違うんですね。今回の順番で観ていただければ、後半に「これ以上の悪人はいるか!」と腑に落ちる爽快感が得られるはずです。『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を書き終えたこのタイミングで、滅多にない巡り合わせが来ている。きっと半二も大入りにしたいだろうし、文楽がもっと盛り上がることを願っていると思います。
【PROFILE】大島真寿美(おおしま・ますみ) /1962年愛知県生まれ。1992年「春の手品師」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2014年『あなたの本当の人生は』が第152回直木賞の候補に。著書に『チョコリエッタ』『香港の甘い豆腐』『虹色天気雨』『やがて目覚めない朝が来る』『すりばちの底にあるというボタン』『ビターシュガー─虹色天気雨2─』『ピエタ』『それでも彼女は歩きつづける』『青いリボン』『戦友の恋』『モモコとうさぎ』『空に牡丹』『ツタよ、ツタ』など多数。
●構成/阿部花恵