◆隠れたメリットも……

 ここまで読まれた人の多くは、「指定校制度」に毛が生えた程度のものと捉えているかもしれませんが、「指定校制度」には実は問題点もあります。

 大学から来るのは特定の学部・学科です。必ずしも自分が勉強したい専攻ではないのに、大学名に惹かれて、あるいは早くに安心したくて選んでしまうことがよくあるのです。そうして入学すると、思っていたものと違うと勉強意欲をなくしてしまうケースがよくあり、中には退学につながることも……。

 一方「高大連携」の場合は、大学生の話を聴いたり、大学教授の講義を受けたり、大学に足を運んで研究室をのぞいたりして、学部・学科を十分理解してから選ぶことになります。あまり触れられていませんが、その点が「高大連携」の良さと言えるでしょう。

◆大学側にもメリットが

 前出の例からは東京女子大学が4校と協定を結んでいることが目立ちますが、実はもっと多数の中高と協定を結んでいる大学もあります。

 神奈川大学は、県立高校61校、横浜市立高校4校、川崎市立高校3校、横須賀市立高校1校、私立高校13校、都立高校2校、都内私立高校2校、静岡県立高校1校、富士市立高校1校──と、これだけの中高と連携協定を結んでいます。

 では、神奈川大学のように、なぜ大学は多くの高校と連携するのでしょうか。ここまで見てきたように、「高大連携」は私立中高が生徒募集を有利に運ぼうと大学との関係を強めようとしているように思えます。確かにそうした面は強いのですが、大学側にも大きなメリットがあるのです。

 これまで、少子化によって18歳人口は減り続けていますが、進学率の上昇で大学受験者数の減少にはなっていませんでした。しかし、いまや大学進学率は53%にまで達し、これ以上大幅な上昇は期待できません。これから大学は受験生獲得にむけて否応なく競争せざるを得ない立場になるのです。そうしたとき、評定平均値3.5以上で、英検2級以上取得の学生が一定数入ってきてくれればこんなにおいしい話はありません。

 とはいえ、付属校や系属校にすると経営責任が生じます。教員・職員の雇用から施設管理まで膨大な経費・労力も伴います。が、別の学校法人との「高大連携」であれば、懐を痛めずに済みます。万が一、マズイことが起これば関係を解消すればいいのです。

 こういう視点で見てみると、「高大連携」は大学側にとってもありがたい話で、まさに「WinWin」の仕組みといえますので、今後はますます拡大するのではないでしょうか。

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