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2019.07.24 07:00  マネーポストWEB

苦境に立つ韓国企業 サムスン電子が中国で大苦戦を強いられるワケ

中国市場で大幅減収となっているサムスン電子(Getty Images)

 韓国を代表する企業であるサムスン電子の業績悪化が目立つ。2019年1-3月期の業績は13.5%減収、営業利益ベースでは60.2%減益、純利益ベースでは56.0%減益であった。地域別の売上高をみると、アメリカ、EU、中国、韓国の順にウエイトが高いが、全体の売上高の15.0%を占める中国は18.1%減収で、部門別では最も大きな減収率となった。

 サムスン電子の中国ビジネスは現在、大きな曲がり角を迎えている。まず、主力のスマホ事業が低迷している。中国の前瞻データベースによれば、2019年1-3月期におけるサムスン電子の世界スマホ出荷台数シェアは22.8%。第2位の華為技術(ファーウェイ)は18.8%、第3位のアップルは12.8%であり、この数字だけ見れば、サムスン電子はこれら2社を大きく引き離して第1位を死守している。とはいえ、中国企業の躍進が著しく、第2位の華為技術に続きアップルを挟み、第4位には小米が8.9%、第5位にはOPPOが8.7%と続いている。

 スマホはモバイルインターネット革命の中核となる製品だ。2007年にiPhoneを開発したアップルが市場を切り開き、サムスン電子がそれに追従し、やがて追い越し、一時は両社が世界市場を席捲する時代もあった。

 しかし、2011年にテンセントがスマホ向けの対話アプリ「微信」を開発、それが中国国民の間に瞬く間に普及した。加えて、アリババが展開するEC取引が隆盛を極めたこともあり、QRコードを使ったモバイル決済も急速に普及した。こうした需要面からの強力な牽引があり、中国のスマホ市場は爆発的に拡大した。

 2019年1-3月期における中国向けスマホ出荷台数は8800万台で世界全体の28.0%を占め、中国は世界最大のスマホ消費国となっている。ちなみに第2位はアメリカで3640万台。台数シェアは11.6%で、中国の4割に過ぎない。

 中国における市場シェアをみると、第1位はファーウェイで34.0%、第2位はOPPOで19.1%、第3位はVIVOで17.1%、第4位は小米、第5位はアップルとなっている。サムスン電子は圏外である。また、サムスン電子の発表したデータによれば、2018年における中国市場シェアは0.8%に留まったようだ。サムスン電子は世界最大市場である中国で壊滅的なダメージを受けている。

 韓国は2016年7月、THAADミサイル(高高度防衛ミサイル)を在韓米軍に配備することを決定。その後、中国において大規模な韓国製品のボイコット運動が行われ、政治面からの影響でギャラクシー(サムスン電子)の中国でのシェアが減少したといった面もある。

 しかし、それ以上に、中国企業が急速に力を付けたことでサムスン電子が競争に敗れたといった面の方が要因としては強いとみられる。

◆「ホワイト国」から外されれば電子機器・自動車も大きな打撃

 同じことがテレビでもいえる。液晶テレビが出回り始めた10数年前にはサムスン電子やLG電子といった韓国メーカーがソニー、シャープ、パナソニック、東芝などの日本企業を打ち負かし、中国市場を席巻したが、今や、そのサムスン電子やLG電子も、海信、スカイワース、長虹、康佳といった中国企業との競争において劣勢に立たされており、かつての日本企業と同様、高級品市場で生き残りをかけてもがいているといった状況になりつつある。

 サムスン電子の収益の柱は、スマホ、テレビを含むディスプレイのほかに、メモリを中心とした半導体などがあるが、中国は今、米中貿易戦争の影響もあり、国を挙げて半導体の開発を加速しようとしている。サムスン電子はいずれ中国企業の激しい追い上げを受けることになるだろう。

 もう少し大きな時間軸で、ここ数十年の世界の産業構造の変化を振り返ってみると、日本が得意とした分野を奪うように産業を発展させてきたのが韓国である。しかし、日本の電器産業衰退の歴史を今、韓国電器メーカーが辿ろうとしている。

 既に中国本土市場では、電器・電子製品について、主戦場となるボリュームゾーンにおいて、韓国企業は中国企業に歯が立たなくなっている。中国企業の強みは世界最大の市場を背後に持ち、量産効果が出るという点であり、くわえて激しい市場競争を潜り抜けてきていることからコスト競争力が強いという点である。本土市場を制圧した中国企業が海外にも販路を拡大し始めており、韓国企業のシェアを脅かそうとしている。

 日本の電器・電子産業は世界において、川下市場に位置する製品では存在感が薄くなってしまったが、素材や電子部品といった川上市場に位置する製品に活路を見出し、そうした分野では強い競争力を保っている。一般消費者には目立たないだけである。これらの開発には、地道な技術開発とその蓄積が必要不可欠であるが、日本企業も韓国企業に対して強い警戒感を持っており、韓国企業に対して簡単には技術移転を許したりはしないであろう。

 国際競争力のある韓国企業を挙げるとすれば、電器・電子ではサムスン電子、LG電子、SKハイニックスなど、自動車では現代自動車、起亜自動車など、鉄鋼ではポスコなど。石油化学、造船、重工業、航空会社、商社などでもいくつか代表企業がある。しかし、金融では世界規模の企業はない。この点が、韓国経済の泣き所の一つである。

 国内市場規模が中国、アメリカ、EU、日本などと比べて小さい分、産業の厚みは薄く、代表企業、代表産業が不振となると、経済は途端に厳しくなる。

 さらに、輸出依存度が高い分、世界経済や、世界情勢の影響を受けやすい。中国が産業のレベルアップを進め、フルセット型産業構造である上に各産業がそれぞれの厚みを更に増す中で、そうした本土市場において韓国経済を牽引する企業は、いずれの分野でも競り負けている。

 日本は外交上、韓国に対して厳しい政策を採りつつあり、8月にも韓国を「ホワイト国」から外すことを検討しているようだ。そうなれば、韓国の2枚看板である電子機器、自動車が大きな影響を受けることになるだろう。

 しかし、そうした短期的な影響よりも、長期的に主力産業が中国企業に打ち負かされることによる悪影響の方が大きい。韓国経済は今、非常に厳しい状況にある。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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