則本は平石の信頼に最高のピッチングで応えた。手術前より威力を増したかのような直球で、オリックス打線を6回3安打無失点に抑えた。
こうした言葉の気遣いにも、平石自身がケガに苦しんだ経験が活きている。
「結局、左肩の痛みとは現役引退まで付き合った。当時は苦しくて、苦しくて、“ケガして成長できた”なんて一度も思ったことがなかった。
だけど、指導者の立場となった今は違いますね。PLで控えだったこともそう。入学まで、たとえPLであってもレギュラーになれると信じ切っていました。控えの主将といわれて、当時は恥ずかしかったけど、野球の視野が広がったことは確かです」
今季、楽天はFAで浅村栄斗を獲得。それによって、控えに回ることになった昨年までの正二塁手・藤田一也に対して、現役時代にベンチで出番を待つ機会が多かった平石はどんな言葉をかけたのだろうか。
「もちろん声はかけましたが、それを自分から公にはしたくない。もしかしたら藤田だって、プラスに受け止めきれていないかもしれないので」
平石のプロとしての現役生活は楽天に始まって楽天に終わり、創設から現在まで常に楽天の歩みと共にある。