思えば、マンガ原作のドラマ『義母と娘のブルース』では、「まずは確認」「これはどうしたことでしょう」などとヒロイン亜希子(綾瀬はるか)は独り言にしても何事も声に出し、心の声はわずかだった。今秋もスペシャルドラマ放送が決定した『渡る世間は鬼ばかり』に至っては「たかが嫁の分際で」とか「鬼婆なんてくそくらえ」とか、これは心の中で言うことでしょと思うこともポンポン口に出し、心の声はゼロ。愛憎丸出し。恐るべきドラマだ。
心の声型ドラマには、主人公に「今さら未婚と言い出せない」「本音を口に出すのが苦手」「私情でなく経理のルールから発言する」「泥棒ということは絶対秘密」といった事情がある。独身女性主役のラブコメということも共通している。
彼女たちがそれぞれの事情とどう向き合い、幸せになれるのか。泥棒の告白はともかく、人との距離の取り方や本音の出し方は、簡単ではない。恋愛がらみともなれば、なおさらだ。心の声は、ヒロインに共感する女性視聴者獲得の大きな武器になっているのである。