スポーツ

ディープインパクトの後継種牡馬 どれも決め手に欠ける実情

種牡馬としても抜群の実績を残したディープインパクト

 訃報は突然だった。日本競馬の歴史にその名を刻んだディープインパクトの「血」について、ライターの東田和美氏が考察する。

 * * *
 7月30日に急逝したディープインパクトは、競走成績もさることながら、種牡馬としての実績も抜群だった。初産駒が2010年にデビューすると、2011年には3歳世代だけでリーディングサイアーの2位につけ、2012年には難なく1位になり、その後はずっとリーディングトップに君臨している。

 2018年は英2000ギニーをサクソンウォリアー、仏ダービーをスタディオブマンが制して日本のみならず欧州でもクラシックホースを輩出。内外で41頭の産駒が60以上のGIを勝っている。日本では5頭がダービー馬となるなど、16頭のクラシックホースを世に送り出している。GII、GIII勝ち馬は70頭近くになり、産駒の獲得賞金はゆうに500億円を超え、種付け料は4000万円だった。

 今年はキングカメハメハも種牡馬を引退したが、こちらはすでにロードカナロア、ルーラーシップというサイアーランキングでベスト10に入るような後継種牡馬がいる。とくにロードカナロアの今年の産駒は母親名を列挙するだけでため息が出てくる。ノーザンファーム(NF)産ではブエナビスタ、ジェンティルドンナ、メジャーエンブレム、マリアライト、ハーブスター、さらにジンジャーパンチとルージュバックの母子。社台ファーム産でもダイワスカーレット、サンテミリオン、追分ファームのレジネッタなど、そうそうたる面々だ。種付け料も1500万円となり、数年のうちにリーディングサイアーの座に就くのは間違いなさそうだ。

 ドゥラメンテはキングカメハメハ産駒というより、社台グループの力が結集したような種牡馬だが、当歳市場でも人気だったし、来年産まれてくる産駒も多い。志半ばで引退した良血リオンディーズもマイル中心に活躍馬が出てきそうだ。その他、ホッコータルマエ、ラブリーデイなどさまざまなタイプの後継種牡馬がいる。地方ではトゥザワールドやペルシャザール産駒が頑張っている。

 一方、ディープインパクトの代表産駒はと聞かれて出てくるのは、まずジェンティルドンナ。牝馬三冠、JC連覇などGIを7勝、獲得賞金ランキングで歴代3位にあたる17億円は、父ディープを凌ぐ。しかし、それ以外の産駒はGI2勝まで。牡馬はJCの勝ち馬がなく、ダービー馬は5頭いるが、他のGI勝利がない。ステイゴールド産駒のオルフェーヴルやゴールドシップの活躍に比べれば物足りないといわざるを得ない。

 ジェンティルドンナをはじめ、JC勝ちのショウナンパンドラや、宝塚記念勝ちのマリアライト、ドバイでも勝っているヴィブロスなど牝馬の活躍が印象深い。彼女らは引退後繁殖牝馬として、サンデー系以外の種牡馬の名声を高めていく。

 ディープインパクト自身の種牡馬としての能力は疑うべくもない。産駒はコンスタントに勝ち上がるし、底知れぬパフォーマンスを見せることはある。ただ、それも「やっぱりディープの子だなあ」ということで納得できるもので、ディープ自身に感じた衝撃以上のものを持った牡馬は、いまのところ出ていないし、種牡馬として衝撃的な実績も出せていない。以下、順に見ていこう。

 2012年のダービー馬ディープブリランテの2018年のサイアーランキングは26位。重賞2勝のセダブリランテスがいるものの、フジキセキ産駒のキンシャサノキセキ(12位)や、ステイゴールド産駒のオルフェーヴル(13位)、ネオユニヴァース産駒のヴィクトワールピサ(18位)の後塵を拝している。今年のNF産にはシンハディーバとの子がいるものの社台G産全体の頭数は少なく、頭打ち感は否めない。

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン