今回の騒動が起きる前、テレビ番組でご一緒した吉本興業所属の人気芸人さんと、待機中に以下のような会話を交わした。

私:「吉本興業には、何人くらいの芸人さんが所属しているんですか?」
人気芸人:「5000人くらいですね」(※直近の報道では約6000人と言われている)
私:「給与は完全に成果報酬なんですか?」
人気芸人:「そうですね」
私:「すると収入0の時もあると思いますが、生活給という概念はないんですね?」
人気芸人:「生活給って何ですか?」

 生活給とは、会社から支払われる給与のうち、働く人が生活する上で最低限必要となる金額を保証する意味合いで支払われる部分である。俗に正社員と呼ばれる働き方の社員の給与には、生活給の概念が含まれているケースが多い。

 サラリーマンの大半は生活のために働いていることを考えれば、生活給という概念は、給与において最も重要だと言っても過言ではない。

 芸人さんから「生活給って?」と返された時、私は他意なく、かっこいいなと思った。生活を守るということよりも、人を笑わせて、売れたら大きな報酬を得る、そうでなければ報酬は得られない──というハイリスクハイリターンを当然だと受け入れる世界で生きている人たちだと感じたからである。ある意味、サラリーマンからは最も遠い世界だ。

 しかし、吉本興業に所属する6000人のうち、売れて人気芸人になれるのはほんの一部だ。ブレイク前の芸人は吉本興業からの報酬だけでは生活できない。だから、闇営業という話になるのだと思う。

“闇”というと悪いことを連想しがちだが、事務所を通さずに営業することを闇営業と呼ぶようである。名称から、反社会的勢力と取引することを闇営業と呼ぶような印象を受けてしまうが、そうではない。

 経営アドバイザリー委員会が行った記者会見では、闇営業という言葉を使わず直営業と表現していた。吉本興業の一件で問題になっている闇営業とは、あくまで吉本興業と所属芸人との契約上の問題に過ぎない。

 そうなると、闇営業をめぐる問題は普通のサラリーマンにとっても身近なものとなる。闇営業は、サラリーマンにとっての副業に相当するからである。闇営業する吉本所属芸人と吉本興業との関係は、副業するサラリーマンと勤めている会社との関係に似ている。

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