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コラム

2019.08.12 07:00  SUUMOジャーナル

デュアルライフ・二拠点生活[15]70代で仕事も現役。「仕事があるから、山里田舎暮らしが楽しい」

今回、インタビューを受けて下さったのは、70代にして大阪で勤務する技術士(電気電子)の加藤進さん。2014年から大阪池田市と岡山県久米郡美咲町でデュアルライフ(二拠点生活)を満喫中です。その動機や経緯などについて、緑ゆたかな美咲町でうかがいました。連載【デュアルライフ(二拠点生活)レポート】
これまで、豪華な別荘が持てる富裕層や、時間に余裕があるリタイヤ組が楽しむものだというイメージがあったデュアルライフ(二拠点生活)。最近は、空き家やシェアハウスなどのサービスをうまく活用することで、さまざまな世代がデュアルライフを楽しみ始めているようです。SUUMOでは二つ目の拠点で見つけた暮らしや、新しい価値観を楽しむ人たちを「デュアラー(二拠点居住者)」と名付け、その暮らしをシリーズで紹介していきますデュアルライフのきっかけは、太陽光発電。妻の実家近くでたまたま見つけたのが美咲町大阪から車で約2時間。美咲町は岡山県の中央部に位置する町で、山道を抜けて町に入ると美しい田園風景が広がる。その小高い丘の上にあるのが、加藤さんの家だ。私たちが到着するやいなや、加藤さんが真っ先に紹介してくれたのが、近くにお住まいの中村隆重さん。この方なくして、デュアルライフは成り立たないと感謝する。

「中村さんは私の師匠!今も土木会社に務めながら、人の田畑まで世話するパワフルな方で、すごく丁寧に教えて下さって。うちの田んぼも、もともと中村さんがずっと世話をしてくれていた関係から、今もサポートしていただいて。裏にある畑も中村さんの指導のおかげです」

加藤さん(右)と中村さん(左)。「加藤さんはすごく丁寧な方ですね」と中村さん。中村さんの畑は加藤さんの畑と隣同士(写真撮影/出合コウ介)

加藤さんがこの生活を始めたきっかけは、太陽光発電というからびっくり。

「私は電気工学科出身の技術士(電気電子)で、自分なりに楽しみながら太陽光発電をやりたかったわけですが、大きな敷地がいる。最初は大阪で探していたのですが、いい物件がなかなか見つからなくて。それなら田舎がいいなと、岡山県津山市にある妻の実家近くで探すことにしました。年に何度か帰っていたのですが、どうせ田舎に家を構えるなら、やはり妻が時々両親を見に行ける環境が欲しいなと思ったんです」

親(嫁)孝行と趣味生活の両立。まさに一石二鳥と加藤さんは笑う。地元の不動産店から3カ所紹介してもらい、この美咲町の物件を見た瞬間、「ここだ」とピンと来て即決した。

「築70年の物件は、柱と梁も立派で、太陽光を搭載するのに家の大きさもちょうどいい。義父の後押しも大きかったですね。山と田んぼ、家がぽつりぽつり。ここから見えるそんな景色も、すごく気に入りました」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

庭の奥に山と田園が広がるこの景色が加藤さんのお気に入り。「この緑の絨毯がね、秋には黄金に変わるんです」と加藤さんの妻(写真撮影/出合コウ介)

「ここに座ってぽかんと外を眺めているだけで、気が晴れる。山から抜ける風も気持ちいいです」(写真撮影/出合コウ介)

技術者の血が騒ぐ?「ああしたい」「こうしたい」がいっぱい出てくる、田舎暮らし梅田の高層ビルで週4日パソコンに向かう加藤さん。今は月2、3回美咲町に通い、妻は津山市の実家へ、夫は田畑作業と農機調整に励み、リフレッシュ!「お互い気を使わず、好きなようにやっているのがいいんですね。でも、田畑はおまけでついてきたようなもので。田舎暮らしで畑くらいはやるつもりだったけど、まさか田んぼまでやることになるとは」と加藤さん。田んぼの登記簿謄本を譲度する場合の規制は厳しく、本当にできるかどうか審査が必要だ。加藤さんは「そこに山があるから登るように、そこに田んぼがあるから耕すだけ」と、行政書士の方に営農計画を造ってもらい、時間をかけて譲り受けた。1年目はそのまま中村さんに預かってもらっていたが、「このままじゃプランの趣旨に外れる」と2年目から奮起して、農業開始!

「素人がイチから始めるので、中村さんの教えやネット情報をたよりに、娘夫婦やその友達に手伝ってもらいました。1年目は田畑を耕す耕運機を使う初歩的なやり方でしたが、2年目からトラクターを使うなど、失敗しながら自分なりにソリューションを見つけて対処していくのもまた楽しい(笑)。それは畑も同じですね。稲作は実は繊細で、毎日水の状態を見て、水を充てる、水を引くなどの対処が必要ですが、中村さんがわずかな金額でやってくださるから、続けられるんです。何かあればスグに連絡下さるし、頼もしい味方です」

家から歩いて5分の場所にあるハート型の田んぼは2反(600坪)は物件購入時についてきた。中村隆重さんと加藤さんとお孫さん(写真撮影/出合コウ介)

今や田植えは家族の年中行事のひとつ「田植えの時期に合わせて来るようにしています」と娘さん(写真/ご本人提供)

畑にはキャベツやピーマン、トマト、キュウリなどの旬の野菜が育つ。「このあたりはムジナが出て、トマトの皮だけ残して食べるんです」(写真撮影/出合コウ介)

念願だった太陽光も、業務用10kwを屋根に上げ、申請から設計、電気工事、メンテナンスまで全部自分でやり、「古民家の柱は太陽光パネル800kgを支えてくれる頑丈なつくりでした」と大満足。家の電気配線も自ら工事(※)、井戸にポンプをつけて配水したり、草刈り機がオーバーヒートしたから自分で直したり、水やりが大変だから今度はスプリンクラーつくりたいと、田舎暮らしは技術屋の血が騒ぐそう。

「のびのび、マイペースにやりたいようにやれる環境がすごくいい。頭使うのも身体動かすのも大好きで、最初は漠然と始めた田舎暮らしでしたが、住み始めたら、ああしたい、こうしたいがいっぱい出てきて。今後は使っていない部屋のDIYもゆっくりしていきたいですね。もともと趣味だったアマチュア無線、今はお休みしています(笑)」

小高い丘の山裾にある加藤さんの家。太陽光発電が搭載され、田舎の町並みで一際目立つ(写真撮影/出合コウ介)

井戸にポンプを付けて、簡単に水が使えるように。さすが、エンジニア(写真撮影/出合コウ介)

「子どもたちがトカゲに触っているのを見て、お友達も触れるようになりました」もともと池田市でもしょっちゅう集まっていた仲良し家族だが、「家族イベントが増えました」と加藤さん。お孫さんたちもここがお気に入りで、川遊びしたり、BBQしたり。特に娘さんの次男坊は昆虫や生き物が大好き。今回、美咲町をおとずれたときも、あぜ道を歩くと足の踏み場もないほどの数の生まれたての小さなカエルにびっくり!トカゲや蝉、トンボと、本当に豊かな自然の恩恵を受けた生き物がいっぱい。「あれ、かなへび」。加藤さんのお孫さんがそっと教えてくれた。

「この子はねえ、本当に生き物が大好きでね。この前もかなへびを手のひらに3匹も乗せて、顔を見ては『かわいいかわいい』って喜んでいて。帰る時間になって、母親が捨てなさいと言うと、泣いて悲しがってるんですよ」と加藤さんは目を細める。孫の知らない一面が垣間見れたのも、「田舎暮らしのおかげ」と喜ぶ。

昆虫や生き物が大好きなお孫さんと(写真撮影/出合コウ介)

下流で川遊び。網で魚をとって、みんな楽しそう(写真/ご本人提供)

田んぼでとれたお米でつくるおむすびは最高!おばあちゃんを手伝う、娘さんの長男くん(写真撮影/出合コウ介)

バーベキューを楽しむ加藤さんとお孫さんたち(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

小さいながらも地元の祭りも多く、桜祭りや夏祭り、花火大会など季節の行事を楽しみにしていて、「花火はね、田んぼの向こうに上がるんですが、これがまたキレイで。今では孫もこっちに地元の友達もできて、喜んでます」。夏休みには、お孫さんのお友達家族も訪れ、合宿を行うそう。

「住宅街では近所に気兼ねしますが、ここなら大声を出しても大丈夫だし、駐車スペースもいっぱい。気軽に集まれるのがいいですね。次男が昆虫や生き物を喜んで触っているのを見て、最初は怖がっていたお友達も触れるようになったんですよ」と娘さんが教えてくれた。加藤さんも「都会の子に田舎の良さを伝えられるのも、田舎暮らしの醍醐味(だいごみ)です」

娘夫婦の友達とその子どもたちもいっぱい遊びに来て夏を過ごすのも年中行事に(写真/ご本人提供)

偶然にも隣家の妻が同級生!「町内会を紹介してもらい、地元にもすんなり溶け込みました」「今日も着いた早々、近所の方から『豆が出来すぎたから取りに来て』と言われ、孫と取りに行って来ました。旬の食材をよくいただきます」。実は、隣にお住まいの中村勉さんの妻が加藤さんの妻と偶然同級生だったことから、町内会の人を紹介してもらい、地域に溶け込んでいった。

隣にお住まいの中村勉さんはもくもくと草刈り。この方の妻が加藤さんの妻と同級生だった。ちなみに、この近くの方々はみんな中村さんらしい(写真撮影/出合コウ介)

「おかげで、スムーズにお付き合いさせて頂けて、本当に助かりました。美咲町は外から来た人々に対して寛容というかそういう風土があり、2人ほど先輩の移住者の方がいらっしゃいましたが、私たち同様、初めての稲作も助けてもらいながらやっていたみたいです」

前出の中村隆重さんも、管理している11反のうち、9反は遠くに住んでいたり、手がまわらない方の田んぼを預かって面倒をみているという。当たり前のように支え合う精神。なるほど、週末だけ来ては楽しむ別荘とは違い、月に数回ではあるが、地域とつながってこその、二拠点生活。今後の目標は?

「都会でランニングマシンに乗るより、農作業をしていい汗かくのが気持ちいい!梅田での忙しいオン生活があるからこそ、田舎でのオフ生活。この生活を始めて、両方手放せないことがよく分かりました。みなさん、よく終活って言いますが、私は今の暮らしの延長線上に将来があると思っています。70歳で現役続行していますが1年契約です。1年、1年できる範囲で仕事をがんばり、この二拠点生活のまま、ピンピンころりといきたいものです(笑)」。70代でお仕事をしているだけでも驚きだったが、デュアルライフを通じて、思いがけなく、自分にぴったりのライフスタイルを見つけた加藤さん。今後も妻や子どもたち、その家族に囲まれて、末永く笑顔で暮らしていただきたいものだ。

※加藤さんは、第1種電気工事士の有資格者のため、ご自身で電気工事を行っています。電気工事士法により、電気工事は専門の資格を持つ者・事業者が行うことが定められています

(高村多見子)

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