そんな小沢氏の剛腕ぶりは、勝負事以外でも発揮されていた。慶應大学の学生時代から碁を通じて親交を深めてきた長井さんにとって、普段の小沢氏は「親戚のおじさん以上、父親のような存在」だそうだが、過去にあったこんなエピソードを披露してくれた。
「小沢さんは、私が学生の時から『もし結婚したい彼ができたら必ず紹介しなさい』といつも仰っていました。最初は冗談かと思っていたのですが、27歳のころ、遠距離恋愛で付き合っていた彼氏の話を少しだけしたら、『会いに行こう』という話になってビックリしました。
当時、彼は大阪に住んでいたのですが、京都の料亭で私たち二人と小沢さんで食事をすることになったんです。彼はとても緊張していたうえに、食事が終わると私と小沢さんで何局か碁を打つことになって……。碁を打てない彼は、その様子を長時間、正座をしながらずっと眺めていました(笑い)。
そして、対局が終わると、小沢さんが彼に一言、『君は彼女と結婚する覚悟はあるのか?』と尋ねたんです。正直、それまで私たち二人の間で結婚の話などしたことがなかったのですが、彼が思わず『はい!』と答えてしまい……その後、トントン拍子に結婚が決まりました。それが今の夫なんです」
長井さんの指導を受けている有名政治家は小沢氏だけではない。近年は細野豪志氏(無所属・旧民主党幹事長)と打つ機会も多かったという。細野氏は田中角栄事務所にあった碁石と手作り碁盤を譲り受けたのがきっかけで、碁に興味を持ったという。
「細野さんは、お忙しいのにちょっとした合間に毎日のようにサロンにやってきて、打っていました。時間管理をしっかりされて、碁を始めて半年で初段になられたほどの努力家です」
子どもなら半年で初段というケースもあるだろうが、大人では3年以上かかっても早いほうといえるため、半年とは恐れ入る。細野氏は夜遅い時間でもサロンに来ては、グロービスの堀義人社長ら仲間と打ったり、囲碁将棋チャンネル(CS・ケーブルテレビ放送)の番組『棋力向上委員会The Passion!!』にも自ら志願して半年間出演したりと努力を怠らず、始めて3年で四段にまで上達。見事に結果を残している。
長井さんに細野氏の棋風も聞いてみた。
「とにかく攻めるのが好きで、良い意味で強情かもしれませんね(笑い)。私が対局中に『こっちに打つほうがいいですよ』とアドバイスすると、たいていの人はすぐ納得してくださるのですが、細野さんは『自分はこうだと思うから』と主張をする方。アマでは珍しいタイプですが、それだけ自信も根拠もあるので、素敵だと思います」