長井さん自身は、指導している常連客との勝負(棋譜)を過去2か月分は覚えており、こんな心掛けで指導碁に臨んでいるという。
「負けが込んでいる人だったら、『今日はたくさん元気づけてあげよう』とか、相手の成長のためにどう寄り添うかを常に意識しています。囲碁を楽しんでもらうための勝負を考えるのがインストラクターの大事な仕事ですからね。それが少しでも囲碁の普及に繋がってくれたら嬉しいです」
碁会所や囲碁サロンと聞くと、どうしても敷居が高いと思ってしまいがちだが、子どもの知育や大人のボケ防止など、「頭」や「脳」に効果的なのは、徐々に知られてきている。最近は会社帰りのビジネスマンがフラリと囲碁サロンに立ち寄り、お酒を飲みながら碁を楽しむ光景も見られるようになった。
「私もワインが大好きで、飲みながら打つこともしょっちゅうあります。もっと囲碁が習い事や趣味のひとつとして身近な選択肢になってくれたらいいなと思っています。たくさんの人たちとの出会いも楽しいですしね」
●ながい・たばさ/1982年生まれ、東京都出身。9歳より囲碁を始め、1995年にプロを目指して日本棋院院生になる。翌年、岩田一門下の内弟子になるも挫折して断念。慶應義塾大学卒業後、大手印刷会社や人材系ベンチャー企業などを経て、2015年に人事コンサルタント兼 囲碁インストラクターとして独立。現在、囲碁将棋チャンネルの出演や囲碁イベントの司会業などでも活躍。
■取材・文/内藤由起子(囲碁観戦記者)
■撮影/内海裕之(長井さん)