小室も及川も開演前から店内の常連客と雑談などをしていたが、19時半すぎ、まず小室がステージに上がり、もともとは小室の歌だったという松岡正剛の『比叡おろし』など4曲を披露。入れ替わりに及川も4曲歌った後、休憩をはさんでいよいよ後半へ。
『いのちかえす日』『戦場はさみしい』『引き潮』『石と死者』など、マイクを通さずとも響いてくる2本のアコースティックギターと、二人の年輪を感じさせるハーモニーを堪能した。小室の指はまるで自在に伸縮するかのようにしなやかで、天井の高い空間にいるだけで、言葉にできない心地よさを聴く者にもたらしてくれる。
客席は(おそらく)かつての六文銭をラジオの深夜放送などで聞いていた世代が中心で、歌だけでなく合間のおしゃべりにもいちいち頷きながら反応している。けっして息を詰めて聞き入っているわけではなく、曲間にはアルコ―ルを口にしながら隣席の人とささやきあったり、みずからも控えめに口ずさんだり。そういえば、第2部では小室自身、IWハーパーの水割りをなめながらのステージだ。
アンコールはそれまで聴く者だった四角とゆいも加わってにぎやかに『ぼくはムギを知らない』。昨年50周年を機にリリースしたアルバム『自由』の最初に収録されている曲だ。
この日は『雨が空から降れば』や『出発の歌』といったかつてのヒット曲は聞くことができなかったが、それゆえに昔からのファンもノスタルジックな気分にひたるのではなく、いまも先を見つめている二人を実感した。
●写真・文/東田和美