◆「おサボリ見ています」
そのあと、別の階で作業をしているとき、張り紙を見つけてその意味がわかった。セッション率を説明する張り紙には、「あなたのおサボリ見ています!!」という見出しがついていた。
「セッション率とは、稼働時間から朝礼・15分休憩・移動時間を差し引いた純粋な稼働時間のことです。基準時間を算出すると、セッション率86%以上が適正値となります。セッション率異常者は、作業履歴を確認してヒアリングをさせて頂きます」
ピッキングの数が少ないだけでなく、ピッキングしている時間が短いと、「サボっている」とみなされヒアリングの対象となるのだ。
最後に簡単な体操をして朝礼は終わり。それぞれ担当の階に散らばっていく。
アルバイトにとって、物流センターのノルマ以上に大切なのは、休憩の時間。そのお昼の休憩時間が、4階の詰所から2階の食堂までの距離が遠いので、削られるという悩みをアルバイトは抱えていた。
この日も、朝礼の前に同じ日に働きはじめた40代の女性が私に話しかけてきた。
「ちゃんとお昼ご飯食べられています? 私は、4階の詰所から2階の食堂まで往復するのに10分は取られるから、その分、お昼ご飯を食べる時間が短くなっちゃって、困っているの」
おそらく地元の主婦ではないかと思われる彼女はそう嘆く。「何をおおげさな」と思われるかもしれない。しかし、小田原の物流センターは、「東京ドーム4個分」の大きさに匹敵する。移動には時間がかかるのだ。