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2019.09.11 07:00  マネーポストWEB

中国の金融緩和は日本市場にどう影響するか

全面的な金融緩和の実施へ(中国人民銀行)

 IMF(国際通貨基金)は7月、2019年、2020年の世界成長率見通しをそれぞれ0.1ポイント下方修正した。2019年の成長率は3.2%としているが、その通りなら金融危機以来の低成長となる。

 米中貿易戦争の激化や、イギリスのEU離脱問題による混乱、大国の経済情勢に大きな影響を受ける新興国での景気・金融市場の不安定化などがリスク要因として指摘されているが、そうした中で、アメリカではFRB(連邦準備制度理事会)が7月31日、10年7か月ぶりに利下げを決定、9月も続けて利下げすることが確実視されている。アメリカは既に景気に配慮する政策を打ち出しており、中国の経済政策が注目されていたが、こちらも金融緩和を含め、景気により気を配る形での経済運営方針に転換するようだ。

 中国人民銀行は9月6日夕方、預金準備率の引き下げを発表した。9月16日より、リース、オートーリースなどのノンバンクを除くすべての金融機関を対象として、預金準備率を0.5ポイント引き下げる。そのほか、零細、民営企業に対する支援を促進する目的で、省クラス域内を経営地盤とする都市型商業銀行に対して、10月15日、11月15日と2回に分けて0.5ポイントずつ、合計1ポイント追加して引き下げる。

 中国人民銀行は、穏健な金融政策といった基本方針は変わらないと説明しているが、一方で、その効果について、全面的な引き下げによって8000億元、特定先に対する追加引き下げによってさらに1000億元の資金供給が行われるだろうと明言している。今年1月4日以来の全面的な金融緩和の実施であり、やはり、景気も重視するといった政策への転換とみるべきであろう。

 この2日前の9月4日、国務院常務会議が開かれ、新たな経済運営方針が発表されたが、現状の経済情勢について、「さらに複雑で厳しくなっている」と分析している。7月30日に開かれた中央政治局会議では「新たなリスクの挑戦に直面している」と説明しており、今回は、景気減速への警戒感の強い表現となっている。足元の景気の悪さ、米中貿易摩擦による先行き見通しの悪さが国務院に対して、景気対策への重要度を引き上げたといえよう。

 今回の常務会議であるが、ポイントは2つある。1つは、景気減速に歯止めをかけるため、6つの安定(雇用、金融、貿易、外資、投資、景気の先行き)業務をしっかりと行うという点であり、もう1つは、地方政府が積極的に特別債券を発行し、有効な投資を行い、内需の弱い部分を補強できるよう支援するといった点である。

 前者に関して具体的な内容を示すと以下の通り。

・職業訓練学校において100万人の募集を増やし、1000億元の失業保険基金を運用して大規模の職業技術トレーニングなどを行う。
・豚肉の供給を確保するなど全体の物価の安定を図る一方で、貧困層への救済として物価スライドによる生活保障を行う。
・引き続き減税、政府手続き費用の軽減を進める。
・今年の地方政府特別債発行枠を9月末までにすべて使い切り、10月末までにすべての資金をプロジェクトに投入するなどして、さらに一歩進んで有効な投資を拡大させる。
・実質的な金利水準の引き下げを加速し、適宜、全面的な預金準備率の引き下げ、特定先向けの引き下げなどを行い、実体経済、特に零細企業に資金が回るようにする。

 また、後者の具体的な内容は以下の通り。

・地方政府が行う重大プロジェクトの資金需要を満たすため、来年の特別債発行枠の一部について、規定に従い前倒しで与え、来年早々にも利用できるようにする。
・特別債における資金使途の範囲を拡大する。具体的には、鉄道、軌道交通(地下鉄など)、駐車場などの交通インフラ、電力ネットワーク、天然ガスネットワーク、天然ガスタンク設備などのエネルギー関連プロジェクト、農林業の水利、汚水処理などの環境関連プロジェクト、職業教育、保育所、医療、養老などに関する民生サービス、低温流通体系設備、水道・電気・ガスなどのインフラ設備。
・特別債券で調達する資金量はプロジェクト全体(ただし、当該省の負担分)の20%前後とする。
・管理を強化し、建設途中で止まってしまうようなプロジェクトの出現を防止する。

 後者については資金的裏付けを強化するための対策であり、これまで以上に着実にインフラ投資が行われることになるだろう。景気、企業業績への直接的な影響の大きな政策といえそうだ。

 中国本土市場ではこのところ株価は回復基調にある。上海総合指数は8月6日をボトムにはっきりとした上昇トレンドが出始めている。9月9日現在、6連騰となっており、節目の3000ポイントを超えてきた。

 日本市場と上海市場との連動性が強まって久しい。中国経済の底打ち感が強まるのであれば、世界経済にも明るさが広がる。グローバル投資家のリスク許容度は高まり、景気敏感株の多い日本市場にとって、それは大きな好材料となるだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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