◆清宮監督のリーダー像
安藤氏が経営者として最も勉強になったのが、大学時代に指導を受けた清宮克幸・監督(現・日本ラグビー協会副会長)の姿勢だったという。
「清宮監督は、個々の役割に関して明確なルールを課していました。監督は『これをやればこういうことができて、だから勝てる』などという説明は一切せず、『とにかくこれをやれ』と言うだけなので、私たち選手には監督と同じようには全体像は見えていません。しかし、監督の指示に疑うことなく従うという規律が出来上がっていたため、与えられた役割を果たすことに集中できるようになりました。その結果、関東大学対抗戦で全勝優勝できたのです。
この経験は後に経営者として大きな学びになりました。社員は社長から与えられた役割で全力を尽くし、社長はその集合体を導くことに責任を負う。それこそ責任あるリーダーの在り方だと思えるようになりました。現場の社員に全部説明して納得してもらわないと動かせないというのは、いい人に見えて“無責任”なだけではないか。清宮監督は説明しない代わりに、結果に対して責任を取ることで組織を動かしていたと思うんです」
安藤氏は学生でありながら、ラグビーを通じて「監督=社長」と「選手=社員」の立場の差を学んでいた。
◆名門大学から一流企業へ
ラグビー経験者が企業で出世していく背景には、ラグビーが主に名門大学で盛んだという事情がある。
同志社大学ラグビー部から神戸製鋼に進み、日本選手権7連覇の偉業を成し遂げ、長く日本代表でも活躍した大八木淳史氏が、その歴史的背景を振り返る。