その抗議が〈脅迫のような行い〉と形容されてしまうものだというのか。〈すごく甘ったれな抗議〉なのだろうか。結果、本当に命を失ってしまったほどの、ギリギリで切実な抗議だったと私には思えるのだが、それも甘ったれた見方にすぎないのか。
〈食べさせないじゃない、自分で食べないじゃ仕方ない。自業自得。食べなければ受け入れてくれると思ったんだろうが、そうはいかない。そんなので許して同じことすれば日本で暮らせるなんて広まったら大変〉
というコメントもあった。たしかに「ハンストさえすれば仮放免が認められる」という話が広がってしまったならば、入管に収容されて当然の理由がある問題人物も右へならえで同じことをし始める危険性がある。
全国に17ある出入国在留管理庁の施設には、6月末時点で1147人いて、そのうちの約75%が本国への送還を拒否。そして、時事ドットコムの報道によれば、6月以降で仮放免を求めて食事を拒否した人は延べで198人いるそうだ。〈東日本入国管理センターで7月、ハンスト中のイラン人男性が仮放免となってから、多いときは全国で1日100人以上が食事を拒むなど、事態が深刻化している〉とも報じている。すでに入管におけるハンストは「ブーム」の様相も呈しており、その中には問題行動といえるケースも混じっているだろう。当局としては、ハンストが仮放免につながるわけでは決してない、という毅然とした態度でことに臨むべきだ。
それはそうなのだが、ハンストをしている人たちの中には、亡くなったナイジェリア人男性のように本気で命をかけている人もいるわけで、その死を〈自業自得〉と斬り捨てる感覚には、私はついていけない。なんでもかんでも本人のせいにする自己責任論と同じ乱暴な処罰感情がそこにはある。と同時に、〈日本で暮らせるなんて広まったら大変〉という文面に表われている排外意識。以下のコメントもまさにそうだ。
〈(センターの)対応は適切だと思います。日本はもっと厳しくする事を望みます。法律は犯罪者に甘く、真面目で弱い人には厳しい。諸外国の人にも厳しく取り締まって欲しいです。日本の文化に馴染めない、馴染もうとしない、自国の文化風習を強要する人は正直日本から出て行って欲しいです〉
ハンストしたナイジェリア人男性が餓死したというニュースを受けて、どうしてこういう話になるのか。死の抗議をせざるをえないほど入管の身柄拘束が厳しかったから、こんな悲惨な「事件」が起きてしまったという思考をするのではなく、なぜ日本の文化がどうのこうのと言い始めるのか。ナイジェリア人男性が〈自国の文化風習を強要〉したと読み取れる報道内容はまったくないのに、なにゆえ〈正直日本から出て行って欲しい〉などと言い放てるのか。
死者に鞭を打つようなコメントを大量に読まされて、私は日本に移民政策は絶対導入すべきでないと改めて思った。
日本には外国人観光客などには優しい人々が多いと感じている。しかし、日本で働く外国人労働者に対しては決してそうだと言えない面もあり、さらに外国人犯罪となると、それがどんなに軽微なものであっても、過剰なほど敏感に防衛反応を働かせる。残酷な処罰感情と排外意識をむき出しにする。
残念なことだが、そのような国は、「開国」なんかしないほうがいい。ダイバーシティとか多文化共生社会とかを目指すには、とてもじゃないがナイーブすぎる。これから本格的な人口減少時代を迎えるが、内側を向いたまま縮んでいくしかないかもしれない。