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2019.10.07 15:00  マネーポストWEB

自然災害が激増の時代 賠償責任と範囲はどこまでか?

千葉県では台風後も悪天候が続き、屋根のブルーシートを住民自ら修復(写真:時事通信フォト)

 9月9日の早朝、関東地方に上陸した台風15号は、“過去最強”といわれている。残した爪痕も規格外。千葉県内を中心に民家の屋根が飛ばされるなどの甚大な風水害が目立ち、停電や断水など、インフラも途絶した。

 そして、市原市のゴルフ練習場では、ネットを支える鉄柱が倒壊。約40世帯の民家を損壊するという前代未聞の事故が発生した。26日、ようやく鉄柱の撤去作業を請け負う業者が名乗り出たが、損壊した住居の補償問題は依然未解決だ。

 11日の説明会でゴルフ練習場のオーナーが「補償費用は全額負担する」と説明したが、そのわずか2日後、ゴルフ練習場側の弁護士が住民に直接電話で「自然災害なので補償しない。それぞれの火災保険などで対応していただくことになる」と告げた。

 災害リスク評価研究所の保険アドバイザーによると、弁護士の主張通り、原則として自然災害による損害は不可抗力と見なされ、賠償責任は問われないという。

「しかし今回は、台風の上陸は事前にわかっていたにもかかわらずネットを下ろさなかったことや、基礎の補修を怠ったことなど、オーナー側の管理不充分が指摘されています。また、年に1度の消防点検を受けていなかった可能性も浮上している。こうした管理上の問題が証明されれば、オーナー側は完全に無過失とはいかず、それ相応の賠償責任を負うことになると考えられます」(保険アドバイザー・以下同)

◆10月からは火災保険料の改定、30%値上げの地域も

 これほど大規模でなくとも、天災によって他人に被害を与えてしまうことはままある。 昨年、関西空港を孤立させるなど西日本を中心に暴風をもたらした台風21号の事例。一般家庭のガレージ屋根が吹き飛び、隣家の高級車を傷つけてしまったのだ。

「この場合も、本来なら補償対象外。しかし、ガレージのオーナーが過去に屋根のガタつきを気にして修理の見積もりをしていたにもかかわらず、それが高額だったために修理を見送っていたことが発覚。『屋根を修理しなかった落ち度による事故』となり、ガレージのオーナーは賠償金を支払うことになりました」

 隣家との人間関係の悪化を案じていたオーナーは、むしろ賠償責任を負うことを望んでいたという。損害保険に詳しいファイナンシャルプランナーの清水香さんが解説する。

「平成30年台風21号で損保会社から支払われた保険金の総額は1兆678億円にのぼり、過去最高を記録しました」(清水さん)

 しかし同台風では、被災世帯の9割以上が一部損壊。「被災者生活再建支援制度」による公的支援金を受けられた世帯はなかったという。もし支援金を受けられたとしても、その金額は最大300万円程度(全壊時)で、自力での修繕が基本とされる。適切な火災保険に加入しているかどうかで、その後の暮らしは大きく変わる。

 災害リスク評価研究所の災害リスクアドバイザー・松島康生さんは、ここ最近は地球温暖化などの影響で自然災害が激増していると語る。

「平成初期までは、命にかかわるような水災・風災は少なかった。しかし、阪神・淡路大震災以降、東日本大震災も含め、非常に多くの大規模な天災が日本を襲うようになっています。北海道地震の大停電など、予想不可能な二次災害が起きる。あらゆるリスクが高い時代といえます」(松島さん・以下同)

 他人の所有物が原因で家や財産を失っても“天災は予測不可能”という理由で責任が問われなくなるとは、なんとも理不尽に感じる。

「埼玉県で起きた衣料品量販店が火元となる火災で、隣接する老舗呉服店に延焼し、全焼させてしまったという事案があります。量販店は上場企業でしたが、過失が認められなかったため賠償責任は問われず。仕事も家も失った呉服店への謝罪は、菓子折り1つだったそうです」

 これは明治32年に定められた「失火責任法」の規定による。多くの人が木造の長屋暮らしだった時代に「火災や延焼のたびに賠償責任を問うことは酷だ」との理由で定められたという。

 こんな時代錯誤な法律やそれにのっとった制度が残っている半面、自然災害は地球規模で激増。しかも10月からは火災保険料の改定が行われる。

「保険料は都道府県や、鉄筋・木造といった建物の種類、築年数などで異なります。今回の改定では、安くなるケースもありますが、大幅に引き上げられるケースもある」(清水さん・以下同)

 例えば、損保最大手の東京海上日動火災保険の場合、栃木県、群馬県、富山県、石川県、山口県、九州6県と沖縄県は、マンション等で30%以上の値上げとなる。

「台風による被害が頻発するため、九州の火災保険料は東京よりも高くなる傾向です」

 これを機に保険を見直さないと、いざという時に泣く羽目になるかもしれない。

※女性セブン2019年10月17日号

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