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2019.10.09 20:02  産経ニュース

モバイル社会に貢献 ノーベル化学賞の吉野氏、充電池に革命

モバイル社会に貢献 ノーベル化学賞の吉野氏、充電池に革命

 ノーベル化学賞の受賞が決まった旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71)は、携帯電話などに広く使われるリチウムイオン電池を開発し、電子機器を自由に持ち運ぶ「モバイル社会」の実現に大きく貢献した。負極材料に特殊な炭素繊維を使うことで性能を大幅に高め、充電池に革命的な進歩をもたらした。(草下健夫)

 電池は物質が起こす化学反応により発電する。正極、負極となる2種類の金属と電解液で構成。電解液の反応で負極から正極に電子が移動することで、電子の流れと反対向きに電流が発生するのが基本的な仕組みだ。充電池は電圧と電流を与え、発電と逆の化学反応を起こすことで充電する。

 リチウムイオン電池では負極に炭素材料、正極にコバルト酸リチウムを使用。充電時にはリチウムイオンが正極から負極に移動し、放電(使用)時にはリチウムイオンが正極に戻る。この反応の繰り返しにより充電池として機能する。

 充電池は既にニッケル・カドミウム(ニカド)電池や鉛電池などがあったが、電解液に水を使っており高電圧、高容量化できない課題があった。

 電解液に有機溶媒を使った高性能の電池として、使い捨てタイプのリチウム電池が実用化されていた。ただ、イオンでなく金属のリチウムを使っているため、これを充電池に使用すると負極の金属リチウムが変形し、電池を破壊して発火する危険がある。吉野氏は金属リチウムに代わり負極の働きをする安全な材料を見いだし、高性能な充電池を実現した。

 吉野氏が昭和56年、負極材料として最初に注目したのは、2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹氏が発見した導電性プラスチックのポリアセチレンで、安全性も高いことを確認した。

 ただ劣化しやすく、小型化もできない欠点があることから、吉野氏は分子構造が似た炭素材料が有望だと判断。100種類以上の材料の試験の後、旭化成が研究中だった高密度で結晶が大きい特殊な炭素繊維に注目した。これを負極に用いた電池を試作したところ高い性能を示し、昭和60年に現在と同じ仕組みのリチウムイオン電池の原型が完成した。

 一方、正極の素材探しは難航したが、57年の暮れ、吉野氏は研究所の大掃除の後に、共同受賞が決まった米テキサス大教授、ジョン・グッドイナフ氏の論文を偶然発見。「コバルト酸リチウムを充電池の正極に使うと高い性能を発揮するが、適切な負極が見つからない」とする内容だった。年明けにポリアセチレンとコバルト酸リチウムを組み合わせた電池を試作したところ、充放電に成功した。

 リチウムイオン電池はモバイル機器や電気自動車などの電源に使われ、現代社会に不可欠な存在になった。吉野氏は「当初は専らビデオカメラへの採用を想定していた。ここまで用途が拡大するとは思ってもみなかった」と驚きを見せる。

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