ところが文大統領の反日政策は、こうした若者の希望の芽を摘み取ってしまった。
「今年9月にソウルで開催される予定だった日本企業の就職説明会『2019下半期グローバル雇用・大田(テジョン)』は文政権の意向で中止になりました。これを受けて韓国の学生は『国内のIT大企業の正社員開発者の採用は競争率が300倍。新人を採用する企業があまりにないので日本での就職を考えたのに、外交摩擦のために政府が乗り出して自国の若者たちの国外就職の道を阻むなんて、とんでもない』と現地紙に怒りをぶつけていました」(勝又氏)
韓国社会に夢も希望も持てない若者たちが直面したのが、チョ氏の「裏切り」だ。
「革新派で清潔なイメージのあるチョ氏でしたが、よりによって親の七光りで娘の就職を優遇させたとの疑惑が持ち上がり、86世代がその不正にフタをしようとした。20~30代の若い世代にしてみれば、“信じていたのに裏切られた”との思いでしょう。韓国の若者は反日教育を刷り込まれてきましたが、ここに来て既得権益層が本当の敵であることに気づいたのかもしれません。文大統領の支持率低下とハンギョレ若手の反乱はその現われと言えます」(勝又氏)
朴槿恵前大統領を奈落の底に突き落としたロウソク革命の原動力となったのは、若者の絶望感から湧き上がる怒りだった。「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」というカール・マルクスの至言は、韓国の左派政権で現実となるだろうか。
●取材・文/池田道大(フリーライター)