永山の分身でもあるような、この影島の造型が面白い。芸人で、文芸誌に発表した小説が芥川賞を受賞しているのは又吉さん自身の経歴にぴたりと重なる一方で、毒舌で破滅型と、又吉さんから受ける穏やかな印象とはかけ離れたキャラクターに設定されている。
「ぼく自身は影島みたいに怒ったりしないし、人の感情が激しているのを面白がるほうです。あんな破滅のしかたもたぶん選択しないやろうけど、そうなる可能性がないわけではない。
ぼくの小説は芸人を書いても劇作家を書いても『又吉の実体験』と読まれてしまうんですけど、俺か俺じゃないかでいうと全部俺なんです。というのをこの『人間』で書くことができたので、次回作は、又吉の実人生とはまったく交わらない作品を書いて、『実は、私小説です』とか言ってみたいですね(笑い)」
■取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2019年10月31日号