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2019.10.22 07:00  マネーポストWEB

貧困が招くうつ病、転倒して寝たきりになるリスクも高い

所得とうつ状態の関係

 何を食べるか、どんな生活をするか、そういったある意味では「自己責任」の積み重ねでもある「健康」にも、所得や経済的な状況の違いによって格差が生じてきている。「健康格差」の実態はどのようなものなのか。

 2015年に発表された厚生労働省「国民健康・栄養調査結果」によれば、所得が600万円以上の世帯に比べて、200万円未満世帯の人は、肥満の割合が高いことがわかった。問題はそれだけではない。低所得世帯の人は「穀類の摂取量が多く、野菜類や肉類の摂取量が少ない」「習慣的に喫煙している者の割合が高い」「健診の未受診者の割合が高い」「歯の数が20本未満の者の割合が高い」ことも明らかになっている。

 夜なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚めてしまうといった睡眠障害も、所得が低い人に多いことがわかっている。「健康格差」について長年研究を続ける、千葉大学予防医学センター教授の近藤克則さんが解説する。

「65才以上の人を対象に調べた結果、不眠の割合は年収が400万円以上の人で約49%、対して年収200万円未満の人は約60%にもおよびました。さらに、学校で教育を受けた年数が短いほど、不眠の割合が高いこともわかっています。

 65才以上の低所得者に不眠が多い理由としては、年金の受給額が少なく、病気のために働き続けられなかったりすれば、将来の心配や不安で眠れないことなどが考えられます」

 うつの割合も、低所得者ほど高くなる。うつというと、長時間労働の会社員がなりやすいイメージだが、近藤さんの研究データによれば、うつ状態と判定される高齢者は年収400万円以上の人に比べ、年収100万円未満の人では男女関係なく平均5倍も多いという。

 近藤さんは、うつはそれ自体の苦しさもさることながら、さらなる病気や不調を引き起こしやすいところが問題だと話す。

「うつになると物事への興味や喜びを失い、食べる元気も眠る元気もなくなってしまう。罪悪感にかられて自死する人もいて、自殺した人の6割にはうつ状態がみられたというデータもあります。

 さらにうつ状態が一定期間続けば、認知機能が低下しやすく、心疾患を発生しやすいこともわかっています。うつが恐ろしいのは、ほかの病気を誘発し、心身の機能低下や死亡する確率まで高めるところなのです」(近藤さん)

 低所得の人がうつ状態になりやすい理由の1つは、生活の不安や薄給かつ長時間にわたる仕事など、過度な心的負担にさらされているからだと考えられる。一生懸命働いても収入は上がらず、負担のかかる仕事を続けるうちに、うつになってしまうことがあるのだ。

 そのうえ、貧困に由来するうつは「要介護」とも密接な関係があるという。

「うつの人は、体を動かす量が減って、身体機能も低下します。それらの結果、転倒しやすいことがわかっています。高齢になるほど転倒すると骨折しやすく、完全には回復できずに寝たきりになるリスクも高まり、要介護の状態を引き起こしやすくなる。低所得の人や教育を受ける機会が少なかった人を追跡すると、うつや転倒が多く、要支援・要介護認定を受けやすいのです」(近藤さん)

※女性セブン2019年10月31日号

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