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信玄堤、岩淵水門… 水害から住民を守った治水の日本史

治水事業の重要性が見直されている(時事通信フォト)

 各地で観測史上最高雨量を記録した台風19号は、70人を超える犠牲者を出した。東京・多摩川や長野・千曲川など、50か所以上で氾濫、決壊が起きた一方、降雨量が多くとも決壊せず、周辺住民を守った堤防もあった。

 中近世の治水事業に関する文献に詳しい、古賀河川図書館(福岡)の主宰・古賀邦雄氏が指摘する。

「縄文時代から水田稲作文化があった日本では、とりわけ中世以降に大規模な治水事業が行なわれ、現代の堤防に繋がる礎となった事業が多くありました」

 その一つが、戦国武将・武田信玄が山梨・甲府盆地に築いたとされる「信玄堤(霞堤)」だ。

「信玄堤は、堤に切れ目を作り、遊水池や田んぼなどに水の流れを逃すことで川の決壊を防ぐ“リスク分散の設計思想”が取られています。他にも、開削により二つの川の合流地点を岩にぶつけて水の力を弱めたり、土手沿いには木を植えて水防林(万力林)として町や田畑を守りました。完成以来400年以上にわたり“現役”である信玄堤をはじめ、信玄の治水事業は今もその効力を失っていません」(古賀氏)

 東京都の東部を流れる隅田川と荒川の水位上昇も心配されたが、氾濫することはなかった。

 かつて東京の大規模治水事業を手がけたのは、江戸幕府を開いた将軍・徳川家康だった。しかし、その後も明治時代に至るまで洪水が頻発。現在に続く「荒川放水路」開削の大事業が行なわれたのは、1910年(明治43年)の大洪水がきっかけだった。

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