ビジネス

ダイエー中内功氏の経営哲学、豊かな時代は自滅に向かう宿命

中内氏は一代でダイエーを日本最大の流通帝国にのし上げた(共同通信社)

 日本の高度経済成長を牽引した「昭和の名経営者」と言えば、松下幸之助、本田宗一郎、小倉昌男などが思い浮かぶ。一方、彼らと肩を並べるほどの成功を収めながら、毀誉褒貶相半ばする人たちがいる。中内功氏もその1人だ。ノンフィクション作家・佐野眞一氏が語る。

 * * *
 セブン&アイの大リストラが発表されたが、スーパーに限らずコンビニエンスストアにせよ、100円ショップにせよ、それはすべてダイエーの中内功が作った仕組みから生まれたものだ。我々はずっと中内が作った世界、それは豊かさを追求した戦後的な世界と言い換えてもいいが、その中で生きてきたことになる。

 一代でダイエーを日本最大の流通帝国にのし上げた中内が、晩年、「戦後最大の失敗経営者」の烙印を押されたまま彼岸に渡ってからもうすぐ2015年、その世界は早晩、限界を迎えるはずだったのである。

 中内は「戦後、神戸から出て大きくなったのは山口組とダイエーだけや」という名台詞を残した。まさに戦後という時空間が、この異様な経営者を生んだのだろう。中内ダイエーの原点は、フィリピン戦線での飢餓体験にある。人肉食すら噂された戦場で、中内は家族で食ったすき焼きの匂いを思い出し、「もう一度、神戸牛のうまいすき焼きを腹一杯食って死にたい」とそればかり考えていた。

 腹一杯になるように安くたくさん──品揃えと価格破壊への執着心はここから始まっている。そして「いくらで売ろうと勝手」という作り手と売り手の力関係を逆転してしまった発想が、流通革命を生んだ。

 私は中内がダイエーの店舗を店内巡回するのに同行したことがある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン