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2019.11.02 16:00  マネーポストWEB

「好きを仕事に」という言葉に違和感を覚えるワケ

好きなことだけやってお金を稼げるなら言うことはないが…(イメージ)

「好き」を仕事に――は多くの人の憧れである。YouTubeのCMでは、YouTuberを登場させて、好きなことをやって稼いでいる人々を描いた。様々な成功者のインタビューでも「好き」を仕事にしたことが語られる。だが、「それって本当か?」と疑問を抱くのはネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。同氏が「『好き』を仕事に」へ違和感を覚える理由について考察する。

 * * *
 まず、「好きなことだけをする」ことでカネをもらっている人なんて全労働者の0.001%ぐらいしかいないんじゃないかと思います。YouTuberでもそうですし、野球選手やサッカー選手でもそうですが、元々「好き」だったことが実は仕事になり、カネを稼ぐ人というのはごく一部。

 一流のアスリートでも引退会見なんかで「プロになってから楽しいと思ったことはなかった」なんて発言をします。元々好きだった野球であっても、仕事としてやっていくうちに、「好き」だけではできなってしまうものなんです。

 稼いでいるYouTuberであっても、稼げる人は率的にとんでもなく低いし、視聴者に飽きられないように努力もするし工夫もするし、時には道化になったりもしなくてはいけない。ふと「これって本当にオレが好きだったことなのかな……」なんて思うかもしれません。

 今回、私が主張したいのは、「好き」なんてものは仕事になり得ないことがほとんどなので、「『好き』を仕事に」なんて煽るんじゃないよ! ということです。

『バカの壁』の著書で知られる解剖学者の養老孟司氏は、「好きなことを仕事にできるんだったら、 自分は大学教授なんかしないでずっと虫を獲ってるよ」と語ったそうです。虫を獲っているだけで「はい、今日5時間虫獲りしたから2万円!」「今日はオオクワガタ捕まえられたから10万円!」なんて人生を養老先生は送りたかったのかもしれませんね。

◆「向いている」「苦痛ではない」仕事をしているだけ

 私自身も自分が好きなことって何だろう、と考えました。すぐに頭に思い浮かんだことがあります。これが3トップです。

【1】昼寝
【2】ニンテンドー3DS の『3DS三國志』
【3】ビールを飲むこと

 本心からの「好き」を挙げるとこの3つになってしまうのですが、こんなもんが仕事になりますかね? この3つをやるだけでお金をくれる篤志家がいらっしゃったら是非ともご連絡下さい。

私以外の方が述べる「好き」を挙げると、「サーフィン」「ホラー映画鑑賞」「マッチングアプリで男漁り」「サバゲー」「ハロプロ追っかけ」「鉄道乗りまくり」「ゴルフ」「AKB48握手会」「寿司屋食べ歩き」など様々な楽しそうなことがあります。

 でも、これらをやっていてお金を貰える人ってどんだけいます? 「好き」は仕事にならないんです。私の今の仕事は「編集」「コラム執筆」「企業広報のプランニング」「イベント・講演登壇」です。

 これはら「好き」かどうかと聞かれたら「好きです!」とは言えません。あくまでも「まぁ、苦痛じゃないし、やりたくないワケじゃないよね……」程度の感覚を抱いています。ライターから送られてきた原稿を編集し、誤字脱字等を直す時「うわーっ! ここの『は』を『が』に直したら違和感が払拭できた。いやぁ~、楽しいなぁ!」なんて思うことはない。

 昼寝、3DS三國志プレイ、ビールを飲んでいる時の「いやぁ、人生って本当にいいものですね」という水野晴郎的感覚はなく、あくまでも「あぁ、無事に記事出せたか。良かったよかった」というモードになります。これは「好き」を仕事にしているわけではなく、ある程度「向いている」「苦痛ではない」仕事をしているだけです。

 私が大学に入った時、1年生の初期の段階ですでに「公認会計士」「弁護士」「国家公務員」を目指す同級生はいました。彼らは大学の4年をかけてその仕事に就くべく努力をしていました。難関試験を受け、見事合格し、希望の職に就きました。

 しかし、彼らが果たして「いやぁ~、電卓叩いている瞬間、超楽しいんだよ!」とか「法廷に入る時アドレナリンビンビン出てくるんだよ」とか「国会答弁の回答作るのサイコー! オレ、この仕事大好き!」なんて言うかといえばそんなことはない。

 それなりに待遇が良い職種に就き、余裕のある人生を送りつつ、趣味の登山や本当にやりたかった子育てを頑張りたい、と彼らは考えているのではないでしょうか。ここでは仕事に対して「好き」なんて考えは一切ない。

 こうした「選ばれし者」しか就けない職業に就いた方々でさえ「好き」を仕事にしているわけではありません。いい加減「『好き』を仕事に」という無駄に若者に夢を見させて、その後絶望の奈落に突き落とすバカな意見はやめませんか? 若者はこの言葉を述べる年長者のことは「胡散臭いヤツ」認定していいと思いますよ。

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