本書冒頭ではその大量脱退劇の詳細を。続く第1部と第2部では国鉄分割民営化(1987年)以来、東労組が宿命的に抱えた革マルの呪縛や全てを牛耳った松崎の死、その革マルにも「JR革マル」と「党革マル」があり、内ゲバや拉致監禁すら横行した知られざる裏面史を、内部資料や元マングローブらの証言を元に検証する。
「よく東労組=革マルだと、国会でも一緒くたにされてましたが、労働者出身か学生出身かで性質も全然違うし、松崎氏が『俺らは革マルではない』と言っていたのはある意味正しいんです。ただその違いを地の文で賢しらに書くより、彼らの身の上話や具体的なエピソードから感じ取ってほしかったし、怒りしかなかった前作に比べると、この本は愛があるかなあ(笑い)。
党革マルにせよJR革マルにせよ、よくも悪くも真面目なんです。機関誌でも組合員以外の労働者のことも考えろとか、結構まともなことを書いてるし、今、本土の労組で辺野古の応援行ってるの、彼らくらいなのと違いますか? その真面目さと優秀さがなぜ暴力に結び付くねん? と、そこが残念ではあるんですけど」
そして第3部「JR北海道『歪な労政』の犠牲者」では、JR随一の経営難や事故の頻発に喘ぐ北の病巣に、いよいよメスを入れる。
ちなみにJRでは〈オープン・ショップ制〉と言って、かつての国労、動労のように複数ある組合を自由に選べるのが建前。が、その結果、不毛な〈労労対立〉を生んだのも事実で、社員の8割が加入するJR北海道労組では、〈北の松崎〉とも称された佐々木信正委員長らが他労組との〈平和共存否定〉を方針に掲げ、個々人の交流にも介入した。
例えばある組合員は、別の組合に所属する友人に結婚式の発起人を頼んだことで執拗な追及や妨害に曝され、出席を断るはめに。他労組との酒席はもちろん、業務連絡や技術指導すら禁じたこの否定方針が、2011年5月の石勝線特急脱線炎上事故を始め、相次ぐ事故の遠因になったとも考えられる。