スポーツ

ACL決勝に臨む浦和レッズ 川崎サポーターの檄に応えられるか

熱き浦和のサポーター(EPA=時事)

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)はアジアのクラブチームにとって最も権威のある大会である。優勝チームは400万ドルの賞金とクラブワールドカップへの出場権を手にする。今年は浦和レッズがアル・ヒラル(サウジアラビア)とアジアの頂点をかけて戦うことになった。サッカーライター・麻野篤氏がレポートする。

 * * *
 選手たち、そして多くのレッズサポーターにとっても、まったく予期せぬ光景だった。11月5日に埼玉スタジアムで行われたJリーグ第32節。ホームの浦和は、リーグ3連覇の望みを残す川崎相手に0-2の敗戦。完敗ともいえる内容だった。

 無理もない。チームは週末にACL決勝1stレグとなるアウェイの大一番を控えている。この日は主力を温存し、前節の鹿島戦から8人の先発交代を行っていたからだ。

 普段なら敗戦を受け入れられないはずの多くのレッズサポーターも、この日は違った。当日の深夜便で決戦の地サウジアラビアに向かう選手たちを拍手で送りだしたのだ。ブーイングなどで選手をネガティブに追い込んではいけない、少しでも選手にいいパフォーマンスを発揮して欲しい、という温かくも最大限の配慮だった。

 さらに想定外の出来事は、その後に起きた。

 先発を外れた興梠慎三、槙野智章らがピッチ脇で試合後のクールダウンのランニングをしながらアウェイスタンドの前を通ると、川崎サポーターから自然発生的に拍手と声援が湧きあがったのだ。

「がんばってこいよ!」
「Jの力を見せろ!」

 驚いたことに川崎サポーターは、「Jリーグを代表してレッズにアジアチャンピオンになってほしい」という気持ちをストレートに選手たちにぶつけてきたのだ。

 当初は困惑気味だった選手たちも状況を理解して反応しはじめる。ベテランの阿部勇樹はペコリと頭を下げ、興梠も軽く手を挙げて応じる。そして、リーグきってのエンターテイナーである槙野が、煽るように両手を振り上げると、川崎サポーターからはさらに大きな歓声があがった。

 昨年までJリーグ2連覇を果たしている川崎は、過去ACLに7度出場もベスト8の壁すら破れていない。黄金期ともいえる充実ぶりで臨んだ今季もグループリーグで敗退と、アジアの分厚い壁には跳ね返され続けている。

 浦和は、むしろその逆だ。リーグ優勝は1回にとどまっているのだが(ステージ優勝は除く)、ACLでは抜群の勝負強さを発揮してすでに2度の優勝を果たし、今季は3度目のアジア王者に王手をかけている。

 Jリーグチャンピオンチームのサポーターからしても、ACLタイトルは憧れであり、日程や移動の過酷さなどを十分リスペクトしたうえでの、週末のビッグマッチへの彼らなりのエールだったのだろう。そしてそれは、多くのJリーグサポーターが内包しているものなのかもしれない。SNS上では、浦和を後押しするような他サポの声も少なくないのだ。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン