國學院大學研究開発推進機構准教授で、神道史研究者の大東敬明さんもこう話す。
「折口信夫が想定したのは、文献や資料が残る以前の大嘗祭であるため、折口説を証明するものは、現時点で確認できません。また、本来の大嘗祭の目的である神々へのお供えを行うと、限られた時間でそうした説を実行することは考えにくい」
それでは、「神々へのお供え」とは一体何をされるのか。木村さんが説明する。
「史料によると、神々にお供えする神饌は、米や粟などの『御飯』のほか、アワビや鯛などの海産物からなる『鮮物』『干物』、生栗や干柿などの『菓子』と多岐にわたります。そのお供え物は柏の葉でできた『窪手』という容器に納められていて、これを天皇陛下が、采女から受け取られた『枚手(ひらて)』という柏の葉の皿に、竹でできた箸を使って一つひとつ盛り付け、それを采女に渡し、采女が神様に一皿ずつ並べてお供えします。
これを32皿分、計500回以上の作法を約1時間半かけて繰り返し行うため、秘儀などを行う時間的な余裕はまったくありません」
儀式はこれで終わりではない。皇室研究者の高森明勅さんが話す。
「神饌のお供えが終わると、神饌の上に白酒・黒酒を2度注ぎかけ、その後、陛下ご自身も米と粟のご飯を3回箸を取って召し上がり、白酒・黒酒も召し上がられます。
その時、陛下は3度拍手をし、『おお』と応答します。これは目上の者にする作法。陛下が通常はされない作法をされる意味でも、非常に重要な儀式と言えます」
※女性セブン2019年11月28日号