芸能

立川志らく 売れっ子になったことが噺家としてもプラスに

志らくは売れっ子になったことがプラスに(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、テレビで有名な芸能人となった立川志らくの渾身の一席「らくだ」についてお届けする。

 * * *
 この秋から朝の情報番組『グッとラック!』(TBS系)の司会を務めている立川志らく。今や完全に「テレビで有名な芸能人」だが、落語の仕事のペースは落とさず、高座の内容にも影響はない。10月1日、柳家喬太郎との二人会で久々に志らくの『らくだ』を聴き、その迫力に圧倒された。

 喬太郎が軽めの二席(新作『路地裏の伝説』と古典『館林』)、志らくが長講一席という構成で、高座に上がった志らくは開口一番「仕事を詰め込み過ぎて疲れてる」と言い、数日間のスケジュールを道中付けのように言い立てると場内から拍手が巻き起こる。この日は『グッとラック!』『ひるおび!』の後『プレバト!!』を2本収録してから会場(赤坂区民センター)に来たという。

 兄貴分が自ら「丁の目の半次」と名乗るのは談志が始めた演出だが、この半次が白目を剥いて「あーあー」と叫びながら頭を大きくグルグル回すという奇妙な行動で屑屋を威嚇するのが志らく版の独特なところ。当代桂文治は片眉を上げた形相と吠えるような大声が異様に怖い兄貴分が白目を剥いて舌をチロチロ出して屑屋を脅す演り方をしていて、これがなんとも可笑しいが、志らくはさらにクレイジー。談志の言う「落語はイリュージョン」を追究する中で志らくが辿り着いた「ワケのわからない奴」としての半次の表現だ。

 酔いが回っていく中で屑屋が「雨の中で寂しそうだったらくだ」のエピソードを語るのは晩年の談志が考案した演出で、志らくはそれを踏襲しながらさらに一歩進めて「兄貴分と喧嘩して会えなくなって寂しい」とらくだに言わせている。この人間味のある男が次の瞬間、一転して凶暴性を剥き出しにする展開は志らく独自のもの。らくだにボコボコにされる屑屋を近所の子供たちが笑って見ている中で、屑屋の子供たちも仲間外れにされないために泣き笑いしているというのが切ない。

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン