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2019.11.16 17:00  マネーポストWEB

お笑い芸人、東京進出に立ちはだかる壁と覚悟

霜降り明星もM-1優勝を経て東京に進出した

 お笑い芸人の中には、そのキャリアを地方からスタートさせる人たちも少なくない。これは吉本興業や松竹芸能などの拠点が地方にもあるからであり、特に大阪で始める芸人は多い。そして彼らの多くは、「いつかは東京に進出しよう」と考えている。

 なぜ彼らは東京進出を狙うのだろうか。大阪の養成所を卒業し、今も大阪で活動をしている芸人のAさん(芸歴8年目)に話を聞いた。

「大阪のほとんどの芸人はいつか東京に進出しようと考えていますよ。同じ時間帯の放送でも、東京だとギャラが2~3倍は違います。楽屋のグレードも、たとえるなら大阪はビジネスホテルで東京は高級ホテルって感じで全然違います。キー局は全部東京にあるし、知名度を上げて全国区で売れるためには東京進出が欠かせませんね」(Aさん、以下同)

 東京のキー局で作られた番組は、全国放送もしくは関東地区で放送される。同じ視聴率1%の場合、視聴者の数は関東地区だと約40万人、関西地区だと約16万人と言われており、やはり東京に進出して番組に出ると知名度が一気に上がるのは間違いないだろう。

 といっても、簡単に東京進出が成功するわけではない。最近ではお笑いコンビ・ダイアンやかまいたち、霜降り明星らが東京進出を果たしており、東京での露出を増やしている。しかし、その裏で数々の芸人が東京進出に失敗し、地方に戻っている。大阪のノリをそのまま東京でやってしまうと、なかなか受け入れてもらえず失敗することが多いようだ。東京では少しマイルドに、万人にウケるようにシフトチェンジする必要があると言われる。

 振り返れば、明石家さんまやダウンタウンも東京進出をした芸人だ。今では誰もが知る存在だが、東京に進出した当初は大阪と東京の違いに苦労したという。彼らは東京に進出する前から大阪では有名な存在だった。吉本が明石家さんまの東京進出を推し進めた当時、東京に本社はなく、東京で売れさせるためのノウハウがほとんどなかったのである。さらに今でこそ当たり前となっている関西弁が当時は受け入れてもらえず、それが大きな壁だったと明石家さんま本人も語っている。

 東京進出にはどれほどの覚悟が必要なのだろうか。

「東京進出をする先輩をたくさん見てきましたが、何かの節目に決断する人が多い印象です。例えば賞レースの決勝に進んだのを機に、東京進出を決める人がいます。なかには大阪のレギュラー番組を全て辞めた先輩もいました。かなりの覚悟だったと思います。失敗して帰ってきても何もないわけですからね。

 大阪には仲の良い芸人がたくさんいるけど、東京で一人暮らしを始めると仕事で相方と話すくらいであとはまったく芸人と話さなくなり、ホームシックのような状態になった人もいました」

 東京進出に成功し、全国区の人気になっても地方のローカル番組のレギュラーを持っている芸人も大勢いる。地元の番組は「実家に帰ってきたかのようにいい意味で気を抜いていられる」というのだ。東京の仕事は番組に合わせて、制作側の考えていることを読み取って出演しなければならないが、地方の番組は自分の好きなことを思いっきりやれるから息抜きにもなっているという。東京進出を成功させた芸人の全国区の番組とローカル番組を見比べてみるのも面白いかもしれない。

■文/矢口渡(芸人ライター)

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