教育行政の責任者である前述の萩生田文科相は受験失敗組。早稲田実業高校から1浪して明治大学に進学した。いずれも受験エリートとは言い難い。安倍首相は自民党幹事長時代に自らのコンプレックスについてこう語ったことがある。
〈コンプレックスのない人間なんて、世の中にそういないですからね。一つは、小学校から大学までずっと成蹊学園にいたので、受験を経験していないんです。人間というのは、ある時、目先の目標を達成するため、大変な思いをして、勉強をするということが必要なのではないかという気がします〉(『Yomiuri Weekly』2004年2月22日号)
麻生氏も大の“東大嫌い”で知られる。昨年、地元・福岡での選挙演説で北橋健二・北九州市長を「人の税金を使って学校に行った。東京大学出たんだろ」と批判。国会で追及されると「自分も東大進学を考えたことがあるが、親から『あれは役人をつくる学校だ』とばっさり切られ、学習院大に進んだ」と釈明していた。『安倍晋三 沈黙の仮面』(小学館刊)などの著書がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「安倍家は祖父の岸信介氏も父の晋太郎さんも東大法学部出身。安倍さんは高校時代に晋太郎さんから“東大に行け”と分厚い辞書で頭を叩かれながら勉強を強いられ、それに反発した。そうしたこともあって、東大出身者とエリート官僚が嫌い。お友達政治家にも東大卒はほとんどいない。
麻生副総理や菅官房長官も東大ではなく、政権として東大出身者主導の政治に対するルサンチマンがあると思う。内閣人事局をつくって官邸が官僚トップの人事権を握り、非東大の政治家が東大出身の官僚の上に立つという仕組みをつくったのもその現われでしょう」
安倍首相が東大出身で占められる財務省幹部との面会が極端に少ないことも報じられたが、やはり東大を遠ざけているのだろうか。
※週刊ポスト2019年11月29日号