田代尚機のチャイナ・リサーチ

物価上昇続く中国、実質的な銀行金利は日本よりも低い現実

中国人民銀行は金融政策の舵をどう切るか

 日本で大手銀行のスーパー定期で100万円預けたとする。預入期間1年プランだと年率0.01%の金利が付くので、1年後は100円の利息が返ってくる計算だ。しかし、この利息に対して、所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%がかかる。合計で税率は20.315%となり、正味の利息収入は80円を割り込むことになる。

 低金利が続く日本の銀行ならではのことだが、それでは中国の銀行と比べた場合、どうだろうか?

 1年定期の預金金利(中国工商銀行など)は1.75%である。すなわち、100万円相当を預ければ、1年目は1万7500円相当の利息が得られることになる。税金については、以前は日本とほぼ同じ20%であったが、2007年8月に5%に引き下げられ、2008年10月からは無税となっている。手取りで比較すれば、日本の80円弱に対して中国は1万7500円となる。これだけ見ると、中国の預金者の方が俄然、有利なように思うかもしれない。

 ただし、正確に比較するには、物価を差し引いて実質金利を計算して、それで比較する必要がある。日本の10月の消費者物価指数(総合)上昇率は0.2%。生鮮食品を除くと0.4%、さらにエネルギーを除くと0.7%である。つまり、ほぼ物価が上昇している分だけ、日本の実質金利はマイナスとなっている。

 一方、中国ではどうか。10月の消費者物価指数(CPI)上昇率は3.8%なので、実質金利は▲2.05%となる。数字だけ比較すれば、中国の方が実質的な価値の目減り分は大きいことになる。

 今年2月の段階で中国のCPI上昇率は1.5%であった。ここ数年、定期預金金利は変化しておらず、この時点での実質金利はプラスとなっていた。しかし、CPI上昇率は3月には2.3%となり、9月には3.0%まで上がった。月を追うごとにデフレが拡大、特に9月と10月の間では、大きく悪化している。

 中国で暮らす人たちにとって、米中貿易戦争による景気への悪影響が懸念される中での利子所得の目減りは大きな不安材料だ。消費を控える動きが心配される。景気の基調がもう少し良ければ、マイナスの実質金利は預金を引き出させ、それを消費に向かわせるような効果も期待できようが、現状では到底、それは望めそうにない。

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