もちろん、ただの自分語りだけで人気者になることは難しい。語りに独自の色を加えることがバズるための必須ポイント。そういった角度から見れば、ダルビッシュほど特色を持つ人はいない。33年間の人生で、視聴者が体験できない濃厚な日々を積み重ねてきたスター選手である。高校野球で活躍し、ドラフト1位でプロ野球選手となり、今ではメジャーリーガー。自身、語ることは山ほどあると言っている。
しかし、才能に彩られた人生は光と同じ分量の影を含む。能力が高すぎる人はどうしても一般人から浮く。そんな孤独感がダルビッシュをコミュニケーションへと渇望させる。動画を観た誰もが感じることだと思うが、地位も名誉も手に入れたはずの男はどこか寂しげだ。
動画内でダルビッシュは過去の過ちについて懺悔していく。高校時代の喫煙、プロ野球選手時代の喫煙とパチスロ、日本ハムファイターズで浮いていたこと……。それこそ、語るべき自慢話は山ほどあるはず。だが自らの栄光について言及することはない。ダルビッシュの動画はさながらひとり「しくじり先生」といった様相。自らの人間性を晒すことで他者に救いを与えている。