──英語の民間試験以外に、共通テストも受けなければならない。受験生は大変です。
鈴木氏:大変とは思いますが、むしろこれまでは、インフルエンザも多く交通機関も止まりやすい冬の時期に、しかも一発で人生を左右してしまうことの弊害がずっと指摘されてきました。今回は、少なくとも英語については分散・複数回実施が可能になり、冬の一発入試の弊害を解消できるはずでした。
何より、国際的なスタンダードに合わせられるのです。今の日本の高校生は、大学受験の時に「欧米の大学 or 日本の大学」という選択を迫られます。日本の大学に行くには日本の受験専用に英語の勉強を、欧米の大学に行くにはそれ用の英語の勉強をしなければならず、「or」になってしまっている。それを、同じ勉強をちゃんとしていれば、欧米の大学にも日本の大学にも行ける「and」にしてあげたかった。それこそ鹿児島の島嶼部の高校に通う高校生でも、学校の勉強をちゃんとしていれば、欧米の大学にも進学できる。そういう形に高校の英語教育を変えたかったのです。
しかし、これだけ、反対ばかりして改革を潰そうとする人たちがいるんですから、今後、金輪際、全国一律で実施するセンター試験の改革なんて無理だと思います。そもそも、55万人が全国一斉に同日に同じ難易度の同一のマークシート方式の試験を行うこと自体に相当無理があります。そこから抜け出さない限り、生徒の学びと高校の授業にゆがみがさらに拡大します。英語の民間検定試験導入は、全国一律一斉型試験からの卒業の第一歩だったわけですが、今回のことで、形式平等主義があまりにも根強く残っていることを、改めて見せつけられました。
長年の学習指導要領違反のことは棚にあげて、できない理由ばかり挙げつらい、修正提案も示さず、関係者で前向きに知恵を出し合おうという人がここまで少なければ、全国レベルでの教育改革は難しいです。
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新聞やテレビ等のメディアには、大学入試改革に対する批判の声が溢れているが、なぜ改革が必要なのか、どんな狙いがあるのかついてはほとんど報じられてこなかったのは事実である。まして、若者の将来を左右する大学入試改革を政争の具にするなどは、もってのほかだろう。
●取材・文/清水典之(フリーライター)