「電話をかけようかどうしようか、何日も迷いましたが、“子供に何かあってからでは遅い”と決心し、非通知で電話しました。ドキドキしながら場所と状況を伝えると、最後に私の名前を聞かれました。でもそれだけは許してほしいと言って、答えませんでした。
後から知ったのですが、通報してすぐ、子供がいつものように泣いていると、警備会社と警察が部屋に入ったそうです。そのマンションの管理人から聞いた話では、以前からご近所内でも問題視されていたとのこと。
その後、第三者が介入しての話し合いがもたれたそうです。それから、泣き声はしなくなりました。少なくとも、子供は虐待から逃れられた――そう思うと、やはり通報してよかったです」(Cさん)
児相は“悪い親を取り締まる機関”ではなく、子育てや親子支援のプロフェッショナル集団だと、一般社団法人ママリングス代表理事の落合香代子さんは言う。
「よほどのことがない限り、通報したからといってすぐに親が逮捕されたり、親子が引き離されたりすることはないので、少しでもおかしいと思ったら通報した方が、子供だけでなく、親にとってもいい」
逆にもし自分が通報されても、それは社会的支援のきっかけを得たというだけのこと。
「子育ての相談相手がいない八方ふさがりの状況から脱出できたと受け止めてほしい。それをきっかけに、どんどん相談していいんです。決してあなたが“しつけができないダメな親”というわけではないのですから」(長谷川さん)
幼稚園や保育者向けセミナーなどを運営する「りんごの木」代表の保育者・柴田愛子さんは、「しつけとは、親が“やらなくちゃ”と思ってするものではなく、各家庭で育つ子供が無意識のうちに吸収していく“うち流のやり方”のこと」だと話す。
「親がいつも“いただきます”と言っていれば、子供もそうするように育ちますし、親がきちんと靴をそろえる姿を見ていれば、子供も自然とそうするようになる。しつけってそんなもの」(柴田さん)
親子を支える制度が整いはじめている。胸を張って“うちの子らしく”育ててほしい。
※女性セブン2020年1月1日号