なぜ韓国では極端な出生率の低下が進むのか。最大の原因として勝又氏が指摘するのは、景気停滞を背景にした「若者の生活苦」である。
「2018〜2019年の最低賃金の引き上げ幅の合計が約29%にも上るなど文大統領の失政によって韓国経済が低迷し、韓国の若者の5人に1人が失業中と言われます。しかも不動産価格も高騰し、若者は結婚して住居を構えて子供を育てるゆとりがありません。実際に出産の先行指標となる婚姻件数は2017年が前年比6.1%減、昨年が同2.6%減で、今年1~9月期は前年同月比6.8%減となっています」(勝又氏)
このまま人口が減り続けると、2065年には韓国国民のほぼ2人に1人が65歳以上になるとの予測がある。将来の年金を払ってくれる世代の減少によって、すでに高齢者の公的年金を受け取っていない人の割合が54%という韓国の社会保障制度は崩壊の危機を迎える。
また日本以上のペースで進む少子高齢化によって韓国の生産年齢人口(15~64歳)が減少を続けることは、国内総生産(GDP)の成長を大きく引き下げる要因となる。
まさに国家存亡の危機と言えるが、文大統領に対策はあるのか。
「ワークライフバランスを重視する文大統領は、『生活が豊かになれば、おのずと出生率は上がる』との考えで、1.5だった出生率の目標設定を取りやめました。文大統領は少子化対策の中心となる『低出産高齢社会委員会』の委員長ですが、就任以来1度しか会議は開かれておらず、事実上の空中分解です。国家国民の存続よりも市民団体や労働組合の都合を優先する左派政権の文大統領のもとでは、出生率の回復は望めません」(勝又氏)
対立する日韓両政府は、少子高齢化という共通の悩みを抱えている。両国が協力して、国難打開のためのアイデアを出し合う機会は望めないだろうか。
●取材・文/池田道大(フリーライター)