政治家にしろ軍司令官にしろ、リーダーには、敵を殲滅するだけでなく、その後の善い世界を「物語り化する能力」が欠かせない。だが湾岸戦争の米軍には、それが備わっていなかった。撤退の前に「地方政府による統治を回復して地域住民に必要な公共サービスを提供する」など、安定と発展の未来を示せなかったため、イスラム過激派の反感を買い、アルカイダはじめ、様々なテロリストによる混乱を発生させた。
世界情勢と並行して国内政治も混迷を深めるなか、理論だけでは指揮のとれない現実が増大するに違いない。その解を「知略」という人的資源に求めるヒントに溢れている。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号